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2023.11.12~12.1 細田前衆院議長と保利元文科省のご冥福を祈りつつ、女性差別と闘ってきた本物のキャリア・ウーマンとして、日本における女性差別の根本的な仕組みを解説する (2023年12月2、7日に追加あり)
(1)細田議長と保利元文科省の追悼


   唐津市       2022.11.3朝日新聞       2021.11.4読売新聞

(図の説明:前は引き子の法被も粗末だったのだが、保利氏のご尽力でユネスコ無形文化遺産に指定されて山笠の塗り替え費用が国から出るようになったため、少しは豊かになったらしく、山笠の色に合わせて町毎に統一された引き子の絹の法被が見た目も美しくなった)

1)細田前衆院議長の死去について
 この前の前議員会で衆議院儀長としての元気なお姿を拝見し、「広津さん、頑張ってね」と声をかけて下さっただけに、*1-1のように、メディアが「細田さんが多臓器不全で亡くなった」と報道した時は、「ひどいバッシング続きで苦労が多かったのだろう」と思い、寂しく思った。

 細田さんは、「東京教育大学附属駒場高校→東大法学部→通産省→運輸大臣等を勤めた父・吉蔵氏の議員秘書→1990年衆議院選挙で島根県全県区から初当選→11回連続当選」という絵に描いたようなサラブレッドであり、自らの選挙では苦労することのない人だったし、紳士でもあった(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%B0%E7%94%B0%E5%8D%9A%E4%B9%8B 参照)。

 そのため、「一部週刊誌で指摘された女性記者へのセクハラ疑惑」というのは、私が経験したのと同様、本当の性格とは真逆の印象を擦り付けるための週刊誌によるあげつらいだと思われる。また、旧統一教会との接点についても、悪い結論ありきのしつこい質問が多すぎるが、「呼ばれて行ったので、リップサービスをした」というのは本当だろう。

 そのため、*1-2のように、自分も経験のある議員仲間は、メディアや野党発の悪評を「またか」と思って気にしておらず、岸田首相は「心から哀悼の誠を捧げたい」「今日までの努力に心から敬意を表す」「様々なご縁で親しくしていただき、先輩としてアドバイスをいただいたことを思い返す」と述べられ、茂木自民党幹事長は「悲しみでいっぱい」と表現され、公明党の山口代表は「自公連立政権をより強固なものにする過程で大きな役割を果たしてもらった」と感謝しておられるのである。

2)保利元文科相の死去について
 保利さんも前議員会で度々お会いし、同じ選挙区(佐賀三区)から出ていたため話が通じやすく、選挙区に関する会合等では親しくお話しすることが多かったため、*2-1・*2-2のように、誤嚥性肺炎で亡くなっていたという訃報に触れた時には寂しさを感じた。

 保利さんは、「東京教育大附属中学・高校→慶應義塾大法学部→日本精工→日本精工フランス社長→父・保利茂氏の死去で1979年衆議院議員総選挙に佐賀県全県区から立候補し初当選→郵政民営化法案採決で反対票を投じて自民党離党→12回連続当選」という慶応ボーイで、大学時代は陸上部だったそうで、スマートなサラブレッドの一生だった(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E5%88%A9%E8%80%95%E8%BC%94 参照)。

 保利さんは、佐賀県全県区から立候補した保利茂氏の選挙を手伝った時、「トラックに荷物を積んで佐賀県中を廻ったが、それでも佐賀方面では殆ど票が入らなかった」とボヤいておられた。佐賀方面は祐徳自動車社長の愛野さん父子の地盤だったからだろうが、金と時間がかかる中選挙区の大変さを垣間見た思いがした。

 なお、2005年9月執行の第44回衆議院議員総選挙(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC44%E5%9B%9E%E8%A1%86%E8%AD%B0%E9%99%A2%E8%AD%B0%E5%93%A1%E7%B7%8F%E9%81%B8%E6%8C%99 参照)については、保利さんは郵政民営化法案採決で反対票を投じたため自民党の公認を得られず、もともと郵政民営化すべきだと思っていた私が自民党公認を得て佐賀3区で闘った。そして、佐賀県連の応援を受けた保利さんが小選挙区で当選し、私は九州比例で当選したが、総選挙後の特別国会で再提出された郵政民営化法案に保利さんたちは賛成票を投じられたものの、自民党を離党されることとなった。

 郵政民営化すべき理由は、①国営のままでは郵便貯金を使った国の隠れ債務が発生するため、「隠れ○○」をなくして国の債務は全て国債残高に現れるようにすること ②国営では機動的なサービスができず、サービスも行き届かないこと 等の理由による。しかし、保利さんは自民党佐賀県連の要請で反対票を投じておられたため、自民党佐賀県連は無所属で立候補された保利さんを応援し、ネジレ選挙になったのだ。

 その後、2008年に麻生内閣で自民党政調会長に就かれ、2009年8月執行の第45回衆議院議員総選挙では、保利さんが佐賀3区の自民党公認となり、私は九州比例の上位にもならなかったため、みんなの党佐賀3区から立候補して落選したわけである。

3)*2-3の記事で、私がひっかかった場所について
 *2-3は、①元唐津市議宮崎さんは「先生は厳しく、中途半端なことを言うとよくしかられた」「国のため地域のためを最優先に考え、政治家の範を示す実直な人だった」「唐津、佐賀のために頑張っていただき、本当に感謝の思いしかない」 ②熊本市議は「真面目な人柄で『選挙は情』だとよく話していたのが印象深かった」 ③昭和自動車常勤監査役の福岡修さんは「陣営の関係者に厳しかった分、自分にも厳しい方だった」 ④曳山取締会の山内総取締は「誠実で温厚な方だった」「曳山の塗り替えなど省庁との橋渡し役として支えていただいた」 等と語られたそうだ。

 もちろんどの人も褒めておられるのだが、①のうち「先生は厳しく、中途半端なことを言うとよくしかられた」と③の「陣営の関係者に厳しかった分、自分にも厳しい方だった」というのは、中途半端だったり、徹底しなかったり、厳しくなかったりすれば生き残れないため、当然のことである。

 しかし、男性の保利さんの場合は、「自分にも厳しい方だった」と言ってもらえるが、女性の私の場合は、「妥協しない」「優しくない」という批判が加わるため、女性であることにより、本来必要なことと矛盾した要求がなされるのである。

 また、②については、選挙は本来なら「政策」が一番大切だが、政策に比べるべきものがない場合には情で決めることになるだろう。しかし、情にはいろいろな要素が入っており、その中には女性への偏見や差別も含まれているため、国民は心してそれを廃すべきである。

 なお、④の曳山の塗り替えなどで保利さんが省庁との橋渡し役となっておられたことを、私は現職時代に聞き、それまで高額の費用を町内会が出して町内会費が高かったと言われていたため、無形文化財を支えるために良いことをされたと思っていた。ただし、要求される厳しさと温厚さを両立できるためには、選挙に晒されない秘書がしっかりしていて、憎まれ役を引き受けてくれることが必要なのである。

(2)政治における女性登用と無意識の偏見

 
 2023.3.9日経新聞          2023.6.22日経新聞   2023.6.22西日本新聞

(図の説明:1番左の図のように、世界ではクウォータ制を採用している国が多く、スペインは閣僚の40%以上、フランス・イタリアは下院の公認候補者男女同数・ブラジルも30%以上となっている。その結果、左から2番目と右から2番目の図のように、日本では政治・経済分野の特にリーダー層でジェンダーギャップが大きく、男女平等が進んでいない。1番右の分野別ジェンダーギャップ指数を見ると、政治・経済分野で男女格差が大きく、健康はまあ良いものの、教育は大学以上で専攻選択や大学院進学において男女格差が大きい)

1)日本の政治には女性が少なく世襲議員が多いこと
 岸田政権は、世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ報告書 2023年版」で日本が146カ国中125位で、特に政治分野が138位と足を引っ張っている状況を改善するためか、「女性活躍」を掲げて東証プライム上場企業の女性役員比率を2030年までに30%以上にする目標を示し、第2次岸田再改造内閣で閣僚の女性比率を30%に近づけるよう引き上げられたが、これには、私も賛成だ。

 しかし、*3-1のように、少子化対策に育児の実態を反映させようと、2児を育てている加藤元国交政務官をこども政策・少子化担当相に起用されたのは、副大臣を経験していない抜擢人事だからではなく、「(世襲国会議員という特殊な立場で)自分の2児を育てただけで少子化の原因を把握でき、少子化を改善できる」と考えているのなら、子育てを馬鹿にしていると思った。本気で少子化対策を考えているのなら、経験豊富な子育て関係の専門家チームが適任である。

 また、首相は、「自民党内に女性議員が少なく、なかなか適任者がいなかった」と漏らされたそうだが、女性5人の閣僚のうち初入閣の3人全員が世襲議員というのも、男性の場合と同様、限られた特殊な経験しかないため問題だ。しかし、自民党の女性議員比率が約1割しかなく、その多くが世襲議員になる理由は、事例を挙げながら以下で詳しく説明するが、根本的には、選挙制度・そこで票を集めやすい候補者の選別と党の公認・メディアの報道の仕方(ここが重要)による国民の投票行動の結果と言わざるを得ない。

 なお、6月に閣議決定された児童手当の拡充などを含む「こども未来戦略方針」の財源確保ができていないとされているが、兆円単位の無駄使いが頻発しているのに、政府が社会保障の歳出削減や他の社会保険から少子化対策財源を出すというのは、社会保障を軽んじていると同時に、現在でも不足している他の社会保険財源の流用にほかならない。また、「子ども真ん中・・」というキャッチフレーズは、「子どもが生まれたら、(特に)母親が犠牲になれ」ということであるため、それなら子どもは作らずに仕事に専念しようという女性を増やすだけであろう。

 その極端な事例が*3-6で、内容は、自家用車内に児童が放置されて死亡するケースが相次ぐ中、このような事を防ぐ目的として埼玉県議会自民党が9月の定例議会に提出した埼玉県虐待禁止条例案(別名:「埼玉のぶっ飛び条例」)だ。

 その内容は、「小学3年生以下の子を自宅等に残したまま外出する(ゴミ捨ても含む)」「18歳未満の子と小学校3年生以下の子だけで留守番させる」「小学生だけで公園に遊びに行かせる」「児童を1人でお使いにやる」「小学校1~3年生だけで登下校させる」を「虐待に当たる」として禁じようとしたものだが、これは子どもを過保護にかつ自由を束縛しながら育ててしまうと同時に、実質的に共働きでは子育てできないようにする条例である。そのため、多くのオンラインによる反対署名で廃案になったが、定例議会に提出する前に、内部で理由を説明して反対できる県議がいなかったのが問題である。

 従って、これらの矛盾に平気でいられるのは、年金等の社会保障に頼る必要のない特殊な環境で育ち、育児・介護を含む家事はこれまでもしなかったし、これからもする予定のない(多くは男性の)議員であろう。

2)「女性ならではの感性」を強調すると問題になる理由
 *3-2は、①岸田政権は新たな布陣で女性登用への消極姿勢を転換した ②男性だけだった自民党4役人事で小渕優子氏を選対委員長に就けた ③首相は自信に満ちた表情で「女性ならではの感性・共感力を十分発揮して頂くことを期待したい」と語った ④女性登用の象徴的存在で首相が「選挙の顔」と称した小渕氏は「政治とカネ」をめぐる問題がある ⑤今回の内閣改造で首相を含む大臣20人のうち世襲議員は8人 等と記載している。

 世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ報告書」で日本も順位を上げる目的だったとしても、①はよいと思う。しかし、②④のように、小渕優子氏は総額約3億2千万円に及ぶ架空の寄付金を関連団体間で計上したり、支援者向けに開いた「観劇会」の収支を改竄したりして元秘書が政治資金規正法違反(虚偽記載・不記載)で起訴され、罪を認めている。

 私は、何のために架空の寄付金を関連団体間で計上したのか不明であるため、小渕氏の関連団体の虚偽記載・不記載が重い罪なのか否かは判断しかねるが、金額が大きいだけに、元秘書のみに罪を負わせて「自分は全く知らなかった」というのはあり得ないと思った。そのため、謝るよりも前に、何のためにそれを行い、それは重い罪に当たるのか否かについて説明すべきだったのだが、そのような時に、父の時代からの元秘書が一人で罪をかぶって小渕氏には影響が及ばないようにしたのは、考え方によっては世襲議員の特権である。

 このように、最初から億単位の金があり、熟練した父親時代からの秘書がいて当選回数を重ね易いのが世襲議員である。そして、適材適所か否かは問わず、当選回数を重ねれば大臣や党内の重要ポストにも就いていくため、それが地元に還元されることを期待して、地元は弔い合戦と称して世襲議員を立候補させ、先代に続いて応援する。その結果、⑤のように、内閣は首相を含む大臣20人のうち世襲議員が8人ということになるわけである。

 さらに、麻生元首相が2008年9月に最初に小渕優子氏を内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画・公文書管理・青少年問題・食育)として登用した背景には、将来、世襲議員として立候補する自分の息子の面倒をしっかり見てもらいたいという意図があったと言われており、世襲議員同士の助け合いもあるようだ。

 *3-3-1は、⑥首相の「女性ならではの感性や共感力を十分発揮しながら仕事をしていただきたい」「土屋品子復興大臣には、女性ならではの視点を最大限に活かし、被災地に寄り添った復興策に腕を振るってもらう」という言葉は、「ステレオタイプの助長や無意識の偏見」 ⑦「あくまでも適材適所。我が党の中に女性議員は少ないという指摘があったが、より増やしていかなければいけないという問題意識は認識している」 ⑧「現在活躍している女性議員もそれぞれ豊富な経験を持ち、優秀な人材は沢山いるが、今回は経済・社会・外交及び安全保障の3つの柱を中心に活躍できる方を選んだ」 ⑨「女性ならでは」という表現が意味するのは、「女性は育児をするもの」「女性特有の気配り」ということであり、無意識の偏見をばら撒き追認している ⑩第2次岸田改造内閣は、19の閣僚ポストのうち女性は5人で26%、3割に達せず ⑪男性優位組織の過去の成功体験に基づいた構造を変える必要がある」 としている。 

 *3-2の③と*3-3-1の⑥は、首相は「女性ならではの感性・共感力を十分発揮して頂くことを期待したい」と語られ、これが「ステレオタイプの助長や無意識の偏見」と言われる」理由は、女性は女性独特の感性や共感力しか持てないという前提があるからだ。

 例えば、現実は、生活者や消費者としての視点は、女性だから持っているわけではなく、多くの場合、男女の性的役割分担によって消費・生活・家計を担当している女性が多く、男性は消費・生活・家計を担当していないから持っていないのである。しかし、これを是としているわけではないため、「女性ならではの感性」を強調することは、⑨のように、「ステレオタイプの助長」になるのである。

 また、「女性ならではの感性」というのは、(私は思いつかなかったため)「女らしさ」で調べてみたところ、i) 淑やか(態度・服装・話し方・声・雰囲気等) ii) 慎ましい iii) 優しくて細やか iv) 感情豊か v) 子供を護ろうとする本能(母性)が強い vi) 本能的(男性のように理屈や理性を先行させない) vii) 嫉妬は女の常(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%B3%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%95 参照)等が書かれていた。しかし、これは大した教育も受けられず、婚家に入って子を産み育てることに専念させられた時代・階層の女性の話であって、現在は事情が全く異なるわけである。

 例えば、学問や仕事をする上で、慎ましかったり、感情的で本能的であったりすることは、邪魔にはなっても長所にはならない。また、淑やかで優しい話し方などとして、前置きや敬語・謙譲語(使い方の誤りもよく見かける)の多すぎる話し方をされるのも、忙しい時にいらいらさせられ、「要するに何?結論から言って」と思う。つまり、「女性ならではの感性(=女らしさ)」とは、社会的に作られた性(ジェンダー)そのものであって、それをすべての女性に押しつけるのは、論理的で男性よりも優秀な仕事をする女性も多い中、女性蔑視や女性に対する「無意識の偏見」を助長するのだ。

 なお、「嫉妬」という言葉は女偏なので、いかにも女性特有のような印象を与えるが、一夫多妻ならともかく、男性の嫉妬も著しく多い。そのため、文字や日本語(漢字は中国語)の中に潜む女性に対する偏見も洗い出すべきで、これは英語では既に行われているのである。

 結論として、⑦⑧のように、豊富な経験と能力を持つ優秀な女性議員を増やすことは必須で、そのためには、⑩のように、少なくとも3割の女性議員や閣僚はいるべきである。そして、⑪の男性優位組織が日本でも成功していなかったことについては、後で例を挙げて記載する。

3)理工系大学「女子枠」の公平性について
 *3-3-2は、①2024年度入試は理工系学部を中心に「女子枠」を設ける大学が多い ②我国では理工系分野で女子の人材育成が必要 ③東京理科大はダイバーシティー推進に力を入れ、女子の少ない工学系3学部16学科に『総合型選抜(女子)』を設けて理工系分野への女子の進学を後押し ④まず大学全体の入学定員の1.2%弱にあたる各学科3人計48人まで、将来リーダーシップを発揮する人材として意欲・向上心のある女子学生を受け入れ ⑤選考方法は調査書・志望理由書等で書類審査を行った上、面接・口頭試問と小論文を実施 ⑥意欲や目標のある人ほど大学入学後も自分を高め、リーダーシップを発揮する人材になり得る ⑦男女で視点や観点が異なるため、研究で多様な角度からの気づきが出て、良い刺激と技術革新を期待 ⑧理工系女子のロールモデルが少ないため就職や卒業後を心配する保護者がいるが、今は理工系女子は活躍の場が多く企業から引く手あまた ⑨女子の少ない学問分野が女子に不向きなわけではなく、『総合型選抜(女子)』は大学からの歓迎の証しということを高校の先生や父母に知っていただきたい ⑩2024年度入試で東京工大・東京都市大等も女子枠を新設、東京工大は2025年度入試で女子枠を募集人員全体の約14%にあたる143人まで拡大 ⑪国内で最初に女子枠を設けた名古屋工大も2024年度入試で女子枠を拡大 ⑫奈良女子大は2022年度に国内の女子大初の工学部開設 ⑬女性のエンジニアや研究者を育てていこうという動きが全国で活発化 と記載している。

 このうち、⑦の「男女で視点や観点が異なるため、研究で多様な角度からの気づきが出る」というのは、岸田首相が言われた「女性ならではの視点を最大限に活かして欲しい」という言葉とどう違うかと言えば、学問では男性と対等かそれ以上の成績を持ちながら(ここが重要)、男女の性的役割分担によって消費・生活・家計を担当している女性の視点を活かせば、「研究で多様な角度からの気づきが出て技術革新に繋がる」ということである。

 それなら、①③④⑤⑥⑩⑪のように、「『女子枠』など作らず、通常の入試で入るのが公平だ」という批判があるが、⑧のように、理工系女子の良いロールモデルが少ないため卒業後の就職や結婚を心配する保護者がいたり、⑨のように、女子の少ない学問分野は女子に不向きだと考える高校教師・保護者・周囲の環境があったりするため、本来は能力があるのに理工系に進学できる学力を備えた女子が少なくなるからである。その例として、⑫のように、女子大には理工系学部のないところが多いし、女子高には男子高と違って理系進学コースのないところが多い。

 しかし、これまでも今も、日本の工業は、素材や部品には(マニアックなくらい)強いが、最終製品に弱かった。その理由は、最終製品は生活環境の中で使われ、性的役割分担の下では多くの最終製品が女性に選択されるため、技術者の中に消費・生活・家計を担当している女性の視点がなければ、生活にマッチしたデザインのよい製品ができないからである。

 このように、②のように、「理工系分野で女子の人材育成が必要」で、⑧のように、「理工系女子は活躍の場が多く、引く手あまた」で、⑬のように、「女性のエンジニアや研究者を育てていこうという動きが全国で活発化している」が、女子学生の周囲の認識や女子の一般入試における実力がついて行っていない現実があるため、「女子枠は不公平」とは言えないのである。

4)副大臣26人・政務官28人の計54人は全員男性で女性0だったこと
 *3-4・*3-5は、①副大臣・政務官54人の人事で女性は0 ②首相は「チームとして人選した結果」と説明したが、内閣のチームなら閣僚・副大臣・政務官を合わせた政務三役の構成に目を光らせるべき ③多様な国民の意見を政策決定に公平・公正に反映させるため、政治分野での女性参画の拡大は重要 ④「指導的地位に占める女性の割合を2020年代の可能な限り早期に30%程度」とするとしているが、第4次計画の「2020年30%程度」からは後退 ⑤自民党には衆院21人・参院24人の計45人の女性議員がいるが、推薦名簿に女性を入れない派閥が多かった ⑥閣僚になるには副大臣・政務官として経験を積んで専門性を磨いておくことが有用で、女性を副大臣・政務官に就けることは女性閣僚を増やす道 ⑦女性比率が2割に満たない国会議員構成は変えなければならず、国際的に低い水準にある女性議員の数を増やすことも不可欠 ⑧政治分野における男女共同参画推進法は、政党に男女の候補者が均等になる目標設定を求めるが、衆院議員に占める女性割合は1割 ⑨小選挙区の公認候補は1選挙区1人に限られるため、現職を優先すると大半を占める男性を女性に交代させるのは容易でないが、比例代表なら女性を優先して名簿上位にすることが可能 ⑩政治活動・選挙運動中のハラスメント被害には女性が遭いやすいため、議席の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」は検討に値する 等と記載している。

 このうち、①②③④⑥⑦⑧⑨については、全く同感だ。また、⑤については、自民党の派閥の多くが副大臣・政務官の推薦名簿に女性を入れなかったのは、何故だろう? 男性の待機組が多いからなのか、女性は標的にされやすいからなのか、その理由が不明である。

 また、⑨に付け加えたいことは、まず比例代表で女性を名簿上位にして当選させ、その後、空いた小選挙区の公認候補にしていけば、現職として活動した後であるため状況がわかっており、小選挙区でも公認すれば当選し易くなるということだ。

 これに対し、「比例代表で女性を名簿上位にすること」や「クオータ制」も女性優遇との批判があるが、⑩のように、女性は、そもそも公認されにくかったり、選挙運動中にハラスメント被害に遭い易かったり、良い政治活動をしてもメディアはじめ一般の人のステレオタイプな女性蔑視や無意識の偏見によって評価されなかったりするため、議席の一定割合を女性にする「クオータ制」は、それがなくても議席の30~40%以下になる性がなくなるまで行う必要がある。

(3)一般社会における女性登用と職場における女性蔑視
 *4-1は、①2022年度の日本の管理職(企業の課長相当職以上)の女性割合は12.7% ②2022年10月時点で従業員10人以上の企業6000社を調査したところ、企業規模別では従業員数10~29人の企業が21.3%と最大 ③300~999人の企業は6.2%、1000~4999人では7.2%、5000人以上では8.2%と大企業の女性管理職割合が低い ④2021年の女性管理職割合で、日本は13.2%で、スウェーデン43.0%・米国41.4%・シンガポール38.1%と主要15カ国最低 ⑤政府は2030年までに東証プライム上場企業の女性役員比率を30%以上にする目標で、2022年から常用労働者301人以上の企業に男女賃金差の公表を義務づけた ⑥厚労省の担当者は「女性管理職の登用は息の長い取り組み」「引き続き登用率の向上を呼びかけたい」と話す 等と記載している。

 また、*4-2は、東大の吉知郁子教授が、⑦雇用は労働者の経済的安定・社会資源の分配・自己確立・成長機会や居場所の提供・孤立防止等の効果を有す ⑧現役世代のセーフティーネットは、良質の雇用確保が最重要課題 ⑨良質な雇用の理想とされてきたのは大企業の正社員で、終身雇用・年功序列・手厚い手当で労働者と家族の生活を支えた ⑩1970~80年代には、男性稼ぎ主が主婦と子ども2人を養う世帯が標準モデルとされ、社会保障も労働者本人の厚生年金だけでなく第3号被保険者制度や遺族年金制度などによりこのモデルを補強した ⑪日本型雇用慣行の標準モデルは、自分自身や家族のケア責任を負わず、仕事に無制限に時間と労力を割ける無限定正社員 ⑫労働者本人は安定雇用と引き換えに長時間労働や転居も伴う頻繁な異動を甘受せねばならなかった ⑬判例は転勤命令を拒否した場合は懲戒解雇も有効とし、長期雇用や高待遇を保証しない企業でも、その解釈は同じ ⑭こうした価値観は健康障害や格差の固定と増大、多様性の阻害といった弊害ももたらした ⑮生活を支えるはずの仕事がストレスを生み、健康を害し生命を失う原因にもなった ⑯女性の労働力率が出産・育児期に落ち込み、出産離職率は約3割に及ぶ ⑰女性が正規雇用で働く割合は20代後半の約60%がピークで、年齢上昇につれて低下するL字を描き、女性労働者の過半数は非正規で働く ⑱晩婚化・非婚化・超高齢化・少子化という不可逆な社会変化が「標準」世帯を過去のものにしている ⑲労働力の先細りや教育水準の高まりを考慮すれば、性別・年齢・婚姻状態を問わず健全な雇用機会を確保することが必要 ⑳日本では男性の有償労働時間が突出して長く世界最長で、その裏返しとして、家事・育児などの無償労働時間は最短で男女格差は5.5倍 等と記載しておられる。

 このうち①の課長は「上層部と社員の橋渡しをする中間管理職」であり、⑨のように、日本企業は「年功序列」「終身雇用」のため課長になるまでの平均勤続年数が20年で40代が中心、外資系企業は経験・能力等の「実力」を重視して活躍できる人材をすぐ戦力として適切な役職に割り当てるため「30歳で中間管理職は当たり前」であり、日本企業よりも管理職の平均年齢が低い(https://www.101s.co.jp/column/middle-management-age/ 参照)。
 
 また、IT導入で現場の情報は上層部に直接伝えることが可能になり、フラットな組織の方が状況変化に素早く対応できるため、上層部と現場社員の橋渡し役である中間管理職は最小限に減らすことが可能だ。そのため、中間管理職を管理職に入れるべきか否かは疑問のあるところだ。

 それにしても、②③のように、従業員10人以上の企業6000社で、課長まで入れても管理職に占める女性割合は2022年度は12.7%にすぎず、企業規模別に見ると従業員数10~29人が最大の21.3%、300~999人は6.2%、1000~4999人は7.2%、5000人以上は8.2%と、大企業で女性管理職の割合が低い。そうなる理由は、男性社員を採用しやすい大企業ほど男性優先で採用し、研修や配置でも男性を優遇しているためで、これは、男女雇用機会均等法違反である。

 そして、④のように、2021年の比較で、女性管理職割合は、日本は主要15カ国のうち最低であるにもかかわらず、⑥のように、厚労省担当者は「息の長い取り組み」「引き続き登用率の向上を呼びかける」などと、やる気のない態度なのである。

 なお、政府は、⑤のように、2030年までに東証プライム上場企業の女性役員比率を30%以上にする目標を掲げ、2022年から常用労働者301人以上の企業に男女間賃金格差の公表を義務づけたが、公表しただけで女性役員比率が上がるわけではない上、300人以下の企業の男女間賃金格差は容認されているのである。しかし、企業規模で分けるべきではない。

 そして、⑦⑧のように、雇用が労働者の経済的安定・社会資源の分配・自己確立・成長機会や居場所の提供・孤立防止等の効果を有し、現役世代のセーフティーネットとして良質の雇用確保は最も重要であるにもかかわらず、女性労働者はその良質の雇用から除外されているのである。

 そして、⑩の「1970~80年代に男性稼ぎ手が主婦と子2人を養う世帯を標準モデルとし、社会保障も労働者本人の厚生年金だけでなく第3号被保険者制度や遺族年金制度等によってこのモデルを補強した」というのは、⑲の教育水準の高まりは戦後の男女平等型教育制度の開始から始まっており、1970~80年代には、既に男性と同じかそれよりも「実力」のある女性も多く生まれていたが、日本企業が良質の雇用機会を与えなかったため、外資系企業で働いていたという事情があり、第3号被保険者制度等は不公平の上塗りでしかなかった。

 しかし、どこで働いても、⑪の「仕事に無制限に時間と労力を割けること」が標準だったため、⑫⑬のように、育児・介護はじめケア労働をする人に対するケア労働罰は確実に存在した。そして、⑯のように、女性の労働力率は出産・育児期に落ち込んで出産離職率は約3割に及び、⑰のように、女性が正規雇用で働く割合は年齢が上がるにつれて低下するL字カーブを描き、女性労働者の過半数は非正規で働かざるを得ない状況になっているのである。

 そのため、⑱のように、静かに非婚化・晩婚化・無子化が進み、その結果として少子高齢化が進行したのであるため、⑲の性別や婚姻状態を問わない健全な雇用機会の確保は、1960~70年代から必要だったのだ。そして、政治が遅れ馳せながらやっと著しい少子化に気づいた時には、既に手遅れだったのである。

 しかし、そう言う私でさえ、近年よく言われる「女性は生理痛が大変で、更年期障害があり、その間に長期育児休暇をとる」というのが本当であれば、やはり女性は戦力にならず、採用・研修・配置で配慮してもやり甲斐がないため、男性を雇いたいと思う。そのため、「すべての女性が、働けないほど生理痛が大変で、更年期障害もあり、それに対する対処方法はない」などという誤った触れ込みをメディアが大々的に行うと、実質的に女性差別を助長することになるのだ。

(4)外国人の登用について
1)政府有識者会議の最終報告書について


  2023.11.21、2023.11.20日経新聞       2023.11.25東京新聞    

(図の説明:左図のように、日本側にニーズがあるため、外国人労働者総数は増えて180万人以上になっているのだが、中央の図のように、技能実習生の所得は高卒非正規より低く、家族帯同もできない。そのため、右図のように、政府の有識者会議が、技能実習から育成労働に変更する新制度案の最終報告書を出したが、就労期間を3年に限定し、対象分野は特定技能と同じに限定し、《日本語能力と技能が要件を満たせば》1年間で転籍可能にするなど、未だ外国人労働者に対する制限の多い人材鎖国状態である)

 *5-1-1は、①厳しい職場環境に置かれた技能実習生の失踪が相次ぎ人権侵害の指摘がある ②政府有識者会議は、国際貢献を目的とした「技能実習制度」を廃止し、外国人材の確保と育成を目的とした「育成就労制度」にする最終報告書をまとめた ③基本的に3年で一定の専門性や技能を持つ水準にまで育成 ④受け入れ職種は介護・建設・農業等の分野に限定 ⑤特定技能への移行には技能と日本語試験の合格という条件 ⑥「転籍」は1年以上働いた上で一定の技能と日本語の能力があれば同じ分野に限り認める ⑦実習生の多くが母国の送り出し機関や仲介者に多額の手数料を支払って来日しているので、日本の受け入れ企業と費用を分担する仕組みを導入 ⑧農家は新たな制度に期待しつつ、雇用主の負担が増えることを懸念 ⑨1年以上働いていること等を要件に「転籍」を認めるので人材流出を懸念 ⑩「日越ともいき支援会」には、職場での暴力・残業代未払い・妊娠による雇い止めなど実習生からの相談が多く、今年に入って保護した人数は127人。「海外の若者たちが日本に来てよかったと思う制度にしないといけない」と話す ⑪野村総研の木内エグゼクティブ・エコノミストは、「人権侵害の温床は『転籍』問題で、条件が緩和されることで企業も従来以上に実習生の人権に配慮することになる」「日本企業にとっては人材を確保していくための重要な仕組みだが、企業がコストをかけて技能を習得させる努力をしても転籍されるという問題が出る可能性もあり、その場合は国が支援することも検討材料」 ⑫日本は、賃金が上がらず円安も進んで、待遇や働く環境を改善しなければ実習生が来てくれない状況なので、日本経済を支えてもらう長期の視点で見直す必要がある 等としている。

 これに加えて、*5-1-2は、⑬最終報告書は現行の厳しい転籍制限で「人権侵害が発生し、深刻化する背景・原因となっている」と記載 ⑭政府有識者会議は、「転籍」の制限期間は現行「3年」から「1年」への緩和を原則としつつ、当分1年を超える制限を認める等の「経過措置」の検討を求めた ⑮政府有識者会議が転籍制限期間延長等の経過措置を「検討」としたのは、地方の事業者や自民党内から「人材が都会に流出する」等の声が相次ぎ、「懸念への対応が必要」と判断したため ⑯経過措置の「当分の間」がどれだけ続くかも透明 ⑰技能実習は2023年6月末時点で全国に約36万人在留、特定技能は2023年6月末時点で約17万人が在留 としている。

 日本国憲法は22条第1項で、「何人も公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択 の自由を有する」 と職業選択の自由を保障しており、労働基準法は3条で「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定め、労働組合法は5条2項4号は「何人もいかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によって組合員たる資格を奪われない」とし、職業安定法3条は「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない」とし、外国人であることを理由に差別的扱いをしてはならないと規定している。

 しかし、①⑩⑪⑫⑬のように、技能実習生は転籍が制限され、人権侵害が発生しても我慢するか、失踪するかしか方法がなく、これが外国人労働者に対する人権侵害が深刻化したり、待遇や働く環境が改善されない背景・原因となっているため、転籍の自由を認めることは重要である。

 そのため、⑤⑥⑭⑮⑯のように、政府有識者会議が特定技能への移行に技能と日本語試験の合格という条件を設け、「1年」であっても「転籍」に制限期間や「経過措置」の検討を求めたのは、外国人労働者に差別的労働条件を押しつけ、人権侵害する状況を温存することになる。

 これに対し、⑦の「実習生の多くが母国の送り出し機関や仲介者に多額の手数料を支払って来日している」というのは、メリットがあるから外国人労働者を受け入れている日本企業が費用を全額負担するのは当然であり、その金額が高すぎるのなら、それこそ日本政府が相手国政府に交渉して下げてもらうべきである。

 また、⑧⑨のように、農家が「雇用主の負担が増える」「転籍で人材流出する」等を懸念しているのであれば、i)農協その他の派遣労働事業者が外国人労働者を雇用し、繁忙期の農家に派遣することによって生産性を上げ、外国人労働者の所得を上げる ii)農業法人が外国人労働者を雇用して大規模な農業を行い、自ら及び外国人労働者の所得を上げる iii)外国人労働者にも独立して日本の農業を担えるという夢を与える 等、外国人労働者を使い捨てしなければ、日本で農業に従事したい外国人は多いと思うし、新しい作物を事業化することも可能であろう。

 そのため、②のように、政府有識者会議が建前と本音の異なる「技能実習制度」を廃止し、「育成就労制度」に移行する最終報告書を纏めたことは評価するが、③のように、「3年で一定の専門性や技能を持つ水準にまで育成」するには、日本人と同様、働きながら夜間中学・高校に通う方が効率的で、雇用主の負担も少ない。

 さらに、⑰のように、2023年6月末時点で、技能実習約36万人、特定技能約17万人が在留していても、④のように、受け入れ職種を介護・建設・農業等の分野に限定しているため、保育や高齢者の生活援助はじめ政府が思いつかないような多くの産業で外国人労働者を獲得できず、その皺寄せがケア労働をしている女性にかかっていることも忘れてはならない。

2)日本は外国人に「選ばれる国」になれるのか?

   
    Nipponcom       出入国在留管理庁   2022.3.23GlobalSuponet

(図の説明:少し前のデータになるが、左図のように、国籍別技能実習生の数は、2017年にベトナムが1位になっているが、現在は円安と他国の賃金上昇で日本の優位性が下がっている。このような中、中央の図のように、2019年に「特定技能」という在留資格を作ったが、特定の産業分野に限られ、「技能実習」から「特定分野」に移行するのにも要件を課している。その特定分野は、右図のように、細かく制限されているが、これは日本国内で労働力が余っている時ならまだわかるものの、少子高齢化で人手不足の時代には合わない)

 *5-2-1は、①「選ばれる国」になれるか否かは今が正念場で、外国人が歓迎されていると感じる環境提供が必要 ②職場や地域社会で外国人が共生できる教育・福祉の基盤づくりが急務 ③6月に「特定技能」で長期就労や家族帯同ができる業種を大幅に増やし、永住に道を開いて外国人労働者受け入れ政策は今や転換点 ④日本には総人口の2%、約300万人の外国人が暮らして第2世代も社会に出始めている ⑤日本語がままならないまま社会に放り出されて疎外感を感じ、日本社会に溶け込めない外国人を放置しておくのはリスク ⑥浜松市は外国人家庭を訪問して相談に応じるなどきめ細かな支援で学校に通っていない子を0にしているが、多くの自治体はそこまで手が回らない ⑦日本国憲法は義務教育の対象を「国民」としているが、日本は「すべての者」への教育提供を定めた国連人権規約と児童の権利条約に批准しており、国籍を問わず子に教育を受けさせるのは政府の責任 ⑧外国人がどこでも教育・福祉を受けられるようにすべき ⑨「移民政策はとらない」「単純労働者は受け入れない」という制約を取り払って日本の外国人受け入れ制度を議論する時 ⑩日本国際交流センターの円卓会議は、外国人を日本社会の一員とし、対等な社会参加で共生社会を築くことを理念に掲げる「在留外国人基本法」を提唱し、そのための基盤整備、財源確保は国の責務とした ⑪企業も意識を変えて長期就労を前提に昇給・昇進や能力開発を日本人と同等にし、優秀な人材は幹部候補として育て、独立を支援するくらいの度量がないと魅力的な会社に映らない ⑫外国人に選ばれる職場づくりは、多様な人材が活躍できるオープンで創造的な企業風土 ⑬豊かで活力ある経済の維持には、開放的な社会であることが前提 ⑭それは古来より海外との交流を深めることで発展してきた日本の歴史 としている。

 このうち⑨の「移民政策はとらない」「単純労働者は受け入れない」と言う人は、メディアや国民だけでなく国会議員にも少なからず存在するため驚くのだが、少子化対策に何兆円も使うより外国人の受入制限を緩めた方が、i)どの産業の人手不足もすぐ補える ii)生産年齢人口が増えるため、少子高齢化の諸問題(負担増・給付減)をすぐ解決できる iii)日本に来る外国人は学びや仕事に積極的な人が多いため、日本文化に良い影響を与える iv)人口密度が高すぎたり、若年層が余っていたりする国もあるため、国際貢献になる v)日本が物価高にならず、国際競争力を持てる 等の理由で著しく効果的である。

 従って、①②⑧⑩のように、職場や地域社会で外国人が共生できる教育や福祉の基盤を作り、外国人が歓迎されていると感じる環境を提供して、日本が「選ばれる国」になることは必要不可欠だ。そのため、⑩の日本国際交流センターの「在留外国人基本法」も良いと思うが、私は、外国人差別だけではなく、女性差別・高齢者差別・障害者差別の禁止も含む公民権法を定めるのがBestだと考えている。

 しかし、③のように、「特定技能」で長期就労や家族帯同ができる業種を大幅に増やしたといっても未だ制限が多すぎ、介護は認めるが生活援助は認めないなど、できないことを挙げればきりが無いのだ。そのため、政府は、やれる仕事のポジティブリストではなく、やれない仕事のネガティブリストを作るべきであり、ネガティブリストを作るに当たってはネガティブな理由・ネガティブにしておくことによる日本経済への影響について国民的な議論をする必要がある。

 そして、④⑤⑥⑦のように、日本には、現在、総人口の2%、約300万人の外国人が暮らしており、次世代も社会に出始めているそうだが、日本語も学校教育も不十分なまま社会に放り出されれば職業選択の幅が著しく狭くなって疎外感を感じ、犯罪を犯さざるを得なくなる。そのため、浜松市はきめ細かな支援で学校に通っていない子を0にしているが、そこまでできない自治体も多いため、「すべての者」への教育提供を定めた国連人権規約と児童の権利条約(日本も批准)に従って、日本政府の責任で国籍を問わずすべての子に教育を受けさせるべきである。

 さらに、外国人労働者が日本を選んで良かったと思えるためには、⑪⑫のように、企業も長期就労を前提に昇給・昇進や能力開発を日本人男性と同じにし、優秀な人材は幹部候補として育て、将来は独立も支援する必要がある。そして、外国人に選ばれる職場は、多様な人材が活躍しやすい開放的で創造的な職場であり、それは女性にとっても働きやすい職場なのである。 

 なお、⑬⑭のように、日本が豊かで活力ある経済を維持できるためには、新しいことを好む開放的な社会であることが必要で、それは、i)稲作の伝来 ii)青銅器・鉄器・馬の伝来 iii)ガラス・絹織物の伝来 iv)有田焼・唐津焼等の陶磁器製法の伝来 v)明治維新後の産業革命 vi)第二次世界大戦後の大改革 など海外との貿易、海外からの移民・後術者の招聘、黒船に起因した大改革など、世界の中の日本の歴史そのものである。

 *5-2-2は、⑭文科省は海外への留学生を2033年までに年50万人にする目標の実現に向け、給付型奨学金対象者を2024年度に7割増3万人にする方針を固め、国際競争力向上のためグローバル人材の育成を急ぐ ⑮政府の教育未来創造会議は4月、2033年までに日本人留学生を年50万人、外国人留学生を年40万人に増やす提言 ⑯文科省が派遣する留学生の奨学金拡充のため、2024年度予算案概算要求に114億円盛り込む ⑰内閣府の2018年度のアンケートでは、経済的理由や語学力不足で外国留学に消極的な若者が5割超で、2割程度の韓国・米国に比べて消極性が際立つ ⑱高校段階での意欲喚起も重要なので「留学コーディネーター」の高校配置も進める ⑲外国人留学生も受け入れ拡大するため、日本学生支援機構に誘致戦略を立案する部署を新設 ⑳日本の在学者に占める外国人留学生割合は5%で、英国20%、オーストラリア30%と比べて著しく低い としている。

 このうち、⑭⑯のように、文科省が海外留学生を増やして国際競争力を向上させるためグローバル人材の育成を急ぎ給付型奨学金対象者を増やすのは良いが、そのための2024年度予算案概算要求が114億円というのは、産業への補助金が兆円単位であるのに対し、教育投資の金額は渋すぎる。何故なら、教育を充実させれば産業への補助金の方が不要で、(政府が邪魔しなければ)日本がトップランナーになることも可能だからである。

 また、⑰のように、消極的な若者が韓国や米国の2倍以上を占めるのは、日本では教育者の賃金を低く抑えているため、⑱のように、教育者自身のレベルが低いことも影響を与えていると思う。そのため、⑮のように外国人留学生を増やし、消極的な若者が日本国内にいても世界に目を向けるきっかけを作るのは、外国人留学生だけでなく、日本人学生にとっても良いことなのだ。

 なお、⑳のように、日本の在学者に占める外国人留学生の割合も5%で、英国20%、オーストラリア30%と比べて著しく低く、⑲のように、外国人留学生も受入拡大するため、日本学生支援機構に誘致戦略を立案する部署を新設するそうだが、それは良いと思う。ここまでやれば、日本は外国人に「選ばれる国」になれるかもしれないからである。

3)経済に寄与する外国人労働者政策とは?
 *5-3には、①外国人材の技能水準が企業の生産性を左右 ②現政策は非高技能者割合を高める可能性 ③成長企業を外国人材確保で優遇する案もある として、具体的には、④外国人にとっては受入国の人口・経済政策や出入国管理制度が実質的「国境」 ⑤外国人労働者の増加は受入国の労働市場にも影響をもたらし、自国民の働き方も変える ⑥2020~22年の外国人一般労働者の賃金水準は専門的・技術的分野の労働者と技能実習生・特定技能外国人で大きく異なる ⑦高技能外国人は賃金が日本人正社員と同水準かそれ以上の者が少なくない一方、勤続年数は短くボーナス支給割合も低いことから、日本型雇用慣行下の正社員として働く者は少数で専門的職種に就いてジョブ型雇用される者が多い ⑧技能実習生と特定技能外国人の賃金水準の中央値は2020年~22年の間にそれぞれ1.4万円、3.6万円上昇し、特定技能外国人の2022年の中央値(20.4万円)は高卒非正規労働者の所定内給与額の中央値(19.2万円)より高い ⑨転職制限によって需要独占的だった技能実習生の労働市場が、転職が認められる特定技能外国人の労働市場との接続で競争的になりつつある ⑩高技能外国人を雇う事業所は日本人の賃金も高く、非高技能外国人を雇う事業所は日本人の賃金も低い ⑪ダストマン英ロンドン大教授らは、ドイツの労働市場で地域に流入した移民労働者の技能レベルに応じて企業内の生産技術が変化することを実証 ⑫日本でも高技能者向け技術を使って生産性を高めた企業は賃金が高く、非高技能外国人の雇用を増やして労働集約的となった企業は生産性・賃金が停滞した可能性 ⑬三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる製造業分野の中小企業支援調査では、97%の事業所が自社で技能実習を修了した者を特定技能1号とした際に月給額を引き上げた ⑭2018年時点は全技能実習生の約6割が最低賃金1千円未満(2022年時点)の自治体に在留し、2021年以降は全特定技能外国人で最低賃金1千円未満の自治体に在留する者は5割を下回った ⑮その結果、2022年は最低賃金が1千円以上の都府県で非高技能労働者総数に占める特定技能外国人の割合は有意に高かった ⑯多くの先進諸国で経済成長に貢献する人材として高技能移民の就労や定住を推進し、非高技能移民は適所で受け入れつつ定住は制限する政策をとるが、現在の日本は専門的・技術的分野の人材以外の外国人労働者にも定住への道を開きつつあり、外国人の受け入れでも大規模な「量的緩和政策」に転じている ⑰高技能外国人と非高技能外国人の新規入国者数は2012年にはほぼ同数だったが、2022年には後者が前者の2.3倍となった ⑱現在の日本は非高技能労働者により選ばれ、非高技能者が日本の外国人労働者の多数派となる日は遠くない ⑲こうした傾向が生じたのは、現行政策が外国人の質と量をともに求めても、技術革新に貢献しうる高度人材には日本で就労する魅力が乏しいから ⑳経済成長というマクロの目標に沿う外国人労働政策を目指すべきと考える 等が記載されている。

 私は、公認会計士・税理士として、現在は組織再編によってBig4になっている外資系監査法人及び同税理士法人で働いていたため、海外から日本に進出してきた企業の監査や税務申告を行うことが多く、それをやるためには外資系企業の社長や重要ポストの担当者に話を聞くことが不可決だった。また、日本から海外に進出する企業のために、Big4のネットワークを使って進出国の法制度や税制を調べることも多かったため、日本と海外の事業環境の違いや雇用環境の違いについて、日本系監査法人に勤務して日本系企業ばかりを担当してきた男性公認会計士より知っているだろう。

 その私の目から見て、*5-3の記事は、調査やデータに基づき精緻に書かれている点では評価できるものの、経済産業研究所(日本系企業)に勤務している橋本氏が、労働経済学の中の外国人雇用という視点のみから記載しているため、日本経済全体の状況を現場の視点から因果関係を明らかにしつつ説明することが不十分だと思った。

 例えば、②⑯⑰の「現政策は非高技能者の割合を高める可能性がある」「多くの先進諸国で経済成長に貢献する人材として高技能移民の就労や定住を推進し、非高技能移民は適所で受け入れつつ定住は制限しているが、日本だけが外国人受入でも大規模な量的緩和政策に転換している」「2022年に非高技能外国人の新規入国者数が高技能外国人の2.3倍になった」というのは、他の先進諸国が日本より前からずっと多くの難民・移民を既に受け入れ、どの産業も日本の農業・製造業・建設業・保育・介護等のように、必要なサービスも提供できなかったり、人手不足で価格が高止まりして国際競争力に乏しいため世界の大競争について行けなかったりして、重要な国内産業を衰退させてしまったことを無視している。

 確かに、⑱⑲のように、「現在の日本は非高技能労働者に選ばれている」とは思うが、「技術革新に貢献しうる高度人材に日本で就労する魅力が乏しい」というのは、外国人にとってのみならず日本人にとっても同じであるため、これら全体に対する日本の解決法は、非高技能外国人労働者の流入を抑えることではなく、日本人を含む全労働者が自己の教育レベルや熟練度を高めたいと思う文化や労働慣行を作ることである。

 そうすれば、③のように、成長企業を外国人材確保で優遇しつつ、非高技能外国人労働者(そもそも、この区分は政府が判断できるものではない)を使い捨てにしなくても、また、④のように出入国管理法で非高技能外国人労働者を閉め出しながら、産業に対しては大量の補助金をばら撒いて国民負担を増やすことばかり考えなくても、⑳の経済成長は進む筈なのである。

 それでは、どの文化や労働慣行がどう変わるのかと言えば、①⑤⑥⑩⑪のように、外国人材の技能水準は企業内の生産技術を変化させ、日本人労働者の技能水準にも影響を与えて企業の生産性を左右するので、外国人労働者の割合が増えれば受入国の文化や労働市場にも影響をもたらして日本人の働き方をも変える。その著しい事例は高給を支払って外国から技術者を招き、技術移転を計った明治初期であり、外国人技術者がいなければ日本が産業革命を起こすことはできなかったし、高技能外国人を雇った事業所は生産のイノベーションを起こして日本人の賃金も高くできたのである。

 なお、⑦のi)高技能外国人は賃金が日本人正社員と同水準かそれ以上の者が多い ii)勤続年数が短い iii)ボーナス支給割合が低い については、まず高技能外国人は賃金が日本人正社員と同水準かそれ以上でなければ日本に来る理由がないからで、これには住居の広さや快適さも含む(例えば米国で広い一軒家に住んでいた人が、東京で狭いマンション《米国ではアパートメントと呼ぶ》にすむのは嫌がる)ため、高技能外国人を東京に招く時の住居費支給額は著しく高くなるのだ。しかし、日本人はそのような住居で我慢しているのである。

 また、ii)の「勤続年数が短い」のは、日本型雇用慣行の終身雇用・年功序列を前提としておらず、職階や年収を上げるためには他企業に移らざるを得ない場合が多いからで、これをジョブ型雇用と呼ぶ。しかし、他企業に移って職階や年収を上げられるためには、受入企業から専門性や熟練度が要求される。そのかわり、専門とかけ離れた部署に次々と転勤させられて専門を磨けないということはないのだ。

 さらに、iii)の「ボーナスの支給割合が低い」については、ジョブ型雇用はジョブに見合った年収があらかじめ決まっているため、それを「12で割って毎月もらってボーナスなし」や「16で割って夏冬のボーナスは月収の2ヶ月分づつ」という具合になり、経営者の気分でボーナスの金額が決まるわけではないため、こちらの方が確実だと私は思う。そのかわり、家族手当や会社所有の社宅・療養施設等はなく、その分は年収に含まれており、日本人も含めて賃金体系が単純になっているのだ。このように、賃金体系が違うと、企業文化やそこで働く人の考え方も異なる。

 なお、⑧⑨のように、転職制限によって需要独占的だった技能実習生の労働市場が、転職が認められる特定技能外国人の労働市場との接続で競争的になり、技能実習生と特定技能外国人の賃金水準が上昇し、高卒非正規労働者の所定内給与額より高くなったというのは、あるべき姿だ。何故なら、日本人と言うだけで生産性の低い労働者に高い賃金を支払えば、それによって皺寄せを被る人が出るのは確実であるため、日本人であっても、専門性を高めたり、熟練したりしなければならないのは当然だからである。

4)日本列島に来た渡来人が日本の産業革命に果たした役割
 現在の人類は全てホモ・サピエンスだ。また、人類のDNAは複雑なので同種の人類は1ヶ所でしか発生せず、現生人類は全て発生したアフリカをいつの時代かに出て他の地域に移り住み、その地域に前からいた他の人類(例:ネアンデルタール人)と混血しながら地球上に広がり、その地域の気候に適応していった人たちだと言える。

 日本については、神武天皇の即位を皇紀元年とし、西暦2023年は皇紀2683年になるため、皇紀元年は西暦では紀元前660年で、これはサマリア陥落(紀元前723年)の63年後である。

 「記紀(古事記、日本書紀)」によれば、紀元前660年に神武天皇が大和(ヤマト)を平定して初代天皇に即位されたが、天皇は古来から「スメラミコト」と呼ばれ、「スメラ」とは「サマリア人」のことで「サムライ」の語源でもあるそうだ。

 また、神武天皇は「ハツクニシラススメラミコト」「カムヤマトイワレビコノミコト」とも呼ばれ、これは日本語では意味不明であるものの、ヘブライ語では意味があり、「神の民であるユダヤ人が集まって建国した最初の栄光ある主」という意味だそうだ(https://nihonjintoseisho.com/blog001/2016/11/21/japanese-and-jews-13/ 参照)。

 そして、*5-4は、①紀元前後の約千年にわたり展開した弥生時代の幕を開けたのは、水田稲作や金属器文化を携えて北部九州沿岸部に現れた朝鮮半島からの渡来人 ②2010年代に登場した核ゲノム分析で、列島在来系と渡来人は、縄文時代以前から海を挟んで同じ遺伝子を共有していたことがわかった ③研究チームは、その理由を「旧石器時代の東アジア沿岸部や島々に両者の元となった集団がいたからではないか」と解釈している ④弥生時代の西日本には想像以上に遺伝的多様な集団が存在していた ⑤弥生文化という特定の文化を、特定の集団だけが独占したとは限らない ⑥先進文化をもたらした渡来人が弥生社会の中核だったとみる説と縄文以来の在来人が主体的に外来文化を取り込んで発展させたとみる説がある ⑦核DNAの分析成果と各地の文化的様相を比較検討すれば人間集団と文化の相関関係がわかる 等と記載している。

 このうち①については、先日、(私の実家近くの)日本最古の稲作跡がある佐賀県唐津市菜畑の末盧館に行ったところ、2600年前の炭化米が見つかったとして展示されていた(http://www.karatsu-bunka.or.jp/matsuro.html 参照)。

 また、②③④は、舟で移動しながら交易や移住をしていたことを考えれば当然と思われるし、実際に、東アジアに住む人々は顔や体型では殆ど区別がつかない。そのため、⑤⑥⑦のように、核ゲノム分析をより広い範囲・多くの検体で行ないつつ、それを文化や言語で補強すれば、先進文化をもたらした渡来人と原住民の関係や集団・技術・文物の伝わり方を科学的に解明できる。

 そして、改革や発展は、開放的でイノベーションの起こりやすい、異文化の交わる場所で起こり易いこともわかる筈である。

・・参考資料・・
<細田議長と保利元文科省を追悼する>
*1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231111&ng=DGKKZO76056290R11C23A1MM8000 (日経新聞 2023.11.11) 細田博之氏 死去 79歳 前衆院議長、先月に辞任
 前衆院議長の細田博之氏が11月10日午前10時58分、多臓器不全のため都内の病院で死去した。79歳だった。東大卒業後、通商産業省(現経済産業省)へ入った。父の吉蔵元運輸相の秘書を経て、1990年衆院選で自民党から出馬し初当選した。当選回数は11回で、2004年に小泉内閣で官房長官、08年に麻生政権で党幹事長を務めた。14年から21年まで清和政策研究会(現安倍派)の会長として党最大派閥をまとめた。21年11月に衆院議長に就き、体調不良を理由に23年10月に辞任した。10月に辞任表明の記者会見を開き、脳梗塞の症状があり治療していると明らかにした。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点について野党から説明を求める声があがっていた。一部週刊誌で指摘された女性記者へのセクハラ疑惑について記者会見で「心当たりはない」と否定した。死去に伴う衆院島根1区補欠選挙は、衆院解散がなければ24年4月になる見通し。

*1-2:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA104DC0Q3A111C2000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2023.11.10) 岸田首相「心から哀悼の誠ささげる」、細田博之氏死去で
 岸田文雄首相は10日、前衆院議長の細田博之氏が死去したことについて「心から哀悼の誠をささげたい」と述べた。細田氏が官房長官や自民党幹事長など要職を務めたのを踏まえ「今日までのご努力に心から敬意を表したい」と語った。細田氏と同じ中国地方の出身である点や派閥のトップとして意見交換したと発言した。「様々なご縁で親しくしていただき、先輩としてアドバイスをいただいたことを思い返している」と話した。首相官邸で記者団の質問に答えた。額賀福志郎衆院議長は「与野党を問わず数多くの議員から信頼され、尊敬される政治家だった」との談話を発表した。与野党からも反応が相次いだ。自民党の茂木敏充幹事長は「悲しみでいっぱいだ」と表現した。「議長を勇退されて健康回復にお努めだと聞いていた」と語った。細田氏がかつて会長を務めた清和政策研究会(現安倍派)の塩谷立座長は「頼りにしていた存在で残念でならない」と述べた。公明党の山口那津男代表は「自公連立政権をより強固なものにする過程で大きな役割を果たしてもらった」と感謝した。立憲民主党の安住淳国会対策委員長は細田氏が旧通商産業省の職員だったときから接点があったと明かした。「ざっくばらんな人柄で楽しい人で、今時使わないが『ネアカ』な人だった」と振り返った。日本維新の会の馬場伸幸代表は書面のコメントで「選挙制度改革やカジノを含む統合型リゾート(IR)の法制化などに尽力した功績に感謝と敬意を表する」と記した。細田氏が追及を受けてきた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点などの問題に関する言及も出た。塩谷氏は「基本的には(生前に)記者会見をしたことが説明責任になると思う」と触れた。安住氏は「立法府の最高責任者として説明責任はぜひ果たしてもらいたかった」と指摘した。国民民主党の玉木雄一郎代表は「十分な説明責任を果たされていないという指摘があり、すっきりしない形で終わってしまった」と話した。細田氏は2021年11月に衆院議長に就き、体調不良を理由に23年10月に辞任した。

*2-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231110/k10014254661000.html (NHK 2023年11月10日) 保利耕輔 元文部相が死去 89歳
 文部大臣や自民党の政務調査会長などを歴任した保利耕輔氏が今月4日に亡くなりました。89歳でした。保利氏は昭和54年の衆議院選挙に自民党から立候補して初当選し、連続12回、当選しました。文部大臣や自治大臣、党の国会対策委員長などを務めましたが、平成17年に郵政民営化に反対して離党しました。その後復党し、党の政務調査会長などを歴任しました。そして平成26年の衆議院選挙に立候補せず政界を引退していました。関係者によりますと、保利氏は今月4日に川崎市の病院で亡くなったということです。

*2-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1141187 (佐賀新聞 2023/11/10) 保利耕輔元文相死去、89歳、元自民政調会長
 文部相や自民党政調会長を歴任した保利耕輔元衆院議員が4日午後、誤嚥性肺炎のため川崎市の病院で死去した。89歳。衆院議長などを務めた父茂氏の後継として会社員から転身し、1979年に衆院佐賀全県区で初当選。12期務めた。教育行政や農政に詳しく、90年に海部内閣で文部相として初入閣。小渕内閣で自治相兼国家公安委員長を務めた。2005年の郵政民営化関連法案の衆院本会議採決では反対票を投じて造反し、自民党を離党した。翌年復党が認められた。08年に党政調会長に就いた。

*2-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1141290 (佐賀新聞 2023/11/11) <保利耕輔さん死去>「芯の通った政治家」 地元唐津でしのぶ声
 唐津市を中心にした地盤で約35年にわたって衆院議員を務めた保利耕輔さんが4日死去した。「保利党」として支えてきた唐津市の関係者に衝撃が広がった。地域の活性化に力を尽くし、芯の通った政治家としての生き方をしのんだ。保利さんの後援会青年部長を務めたのをきっかけに、交友を深めた元唐津市議の宮崎卓さん(78)=唐津市鎮西町。「先生はとにかく厳しく、中途半端なことを言うとよくしかられた。国のため、地域のためにと最優先に考え、政治家の範を示す実直な人だった」と振り返り、「唐津、佐賀のために頑張っていただき、本当に感謝の思いしかない」としのんだ。選挙時に陣営幹部として関わってきた熊本大成市議(74)は、最後に会ったのは今春の県議選だった。党の公認候補の事務所を回ったといい「元気な姿を見ていたから驚いた」と話しつつ、「真面目な人柄で口数は少なかったが、ゴルフの話になると上機嫌に話されていた。『選挙は情』だとよく話していたのが印象深かった」と語った。昭和自動車常勤監査役の福岡修さん(67)は全ての選挙にスタッフとして関わった。「陣営の関係者に厳しかった分、自分にも厳しい方だった」と振り返る。保利さんが週末に地元入りする時は付き人も務め、元首相の小渕恵三氏が唐津市を訪れる際、あえて渋滞が激しい時間帯に車を走らせて唐津-福岡間の道路整備の重要性を訴える場面に車内で居合わせたという。「地元の困り事を何とかして伝えたいという思いだったのだと思う。真面目な姿勢が党派を超えた支持につながった」と話す。唐津神社の秋季例大祭「唐津くんち」を運営する唐津曳山(ひきやま)取締会の山内啓慈総取締(74)は「誠実で温厚な方だった。ただただ寂しい」。文化庁長官を唐津に招き、国の重要無形民俗文化財に指定されている唐津くんちの曳山(やま)について熱心に説明するなど「曳山の塗り替えなど省庁との橋渡し役として支えていただいた」。「くんちだけでなく、唐津を本当に愛した方だった。唐津を永遠に見守っていてください」と言葉をかけた。

<政治における女性登用と無意識の偏見>
*3-1:https://digital.asahi.com/articles/ASR9F61RYR9FUTFL01V.html (朝日新聞 2023年9月13日) 女性閣僚最多、政権は刷新感に期待 「世襲ばかり」の側面も
 第2次岸田再改造内閣が13日、発足する。新内閣の閣僚(岸田文雄首相含め20人)のうち女性は過去最多タイの5人と、改造前の2人から倍増。「女性活躍」を掲げる岸田政権は、東証プライム上場企業の女性役員比率を2030年までに30%以上にする目標を示し、内閣の女性比率もそれに近づくように引き上げた形だ。だが一方、刷新感を演出した側面も否めない。過去に5人の女性閣僚を据えたのは、2001年4月発足の小泉内閣と14年9月発足の第2次安倍改造内閣。14年は安倍晋三首相が「女性活躍担当相」を新たに設け、直後の朝日新聞社の世論調査では女性の内閣支持率が36%から44%へと回復傾向を見せた。岸田内閣は支持率が30%台で推移する。直近の8月の世論調査では女性の支持率は35%。男性の30%は上回るものの昨年7月の59%と比べれば落ち込んでいる。政権内には女性の支持獲得が政権浮揚のカギ―との見方もあり、年頭に首相が「異次元の少子化対策」を打ち出したのも、そうした思惑が透ける。
●少子化対策に育児反映、副大臣未経験で抜擢も
 首相は今回の内閣改造で、少子化対策に育児の実態を反映させようと、2児を育てる加藤鮎子・元国交政務官をこども政策・少子化担当相に起用した。44歳で閣内最年少。衆院当選5回が入閣の目安とされる中、加藤氏は3回。副大臣を経験していない抜擢人事となった。さらに重要閣僚の外相には自派閥から上川陽子元法相を起用。首相は周囲に「海外では女性外相は多い」と語り、上川氏を含む女性閣僚の登用が政権が取り組む「女性活躍」推進の体現を狙った。政権幹部は「女性閣僚が5人になったことで、刷新感が出るといい」と期待を込める。ただ、自民党内に女性議員が少ない現状を踏まえ、首相は周囲に「なかなか適任者がいなかった」と漏らした。5人のうち今回初入閣した3人は、加藤紘一・元自民党幹事長の娘である加藤氏を含め、いずれも世襲議員。「古い政治」のイメージが広まれば、期待した「刷新感」が薄れてしまう可能性もある。
●ジェンダーギャップ、厳しい政治分野
 ただ、「女性登用」をPRしなければならないほど、日本の現状は厳しい。新たにこども政策・少子化担当相に就く加藤氏は、女性活躍担当相も兼務するが、世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ報告書 2023年版」によると、日本は146カ国のうち125位。とりわけ、138位の政治分野が足を引っ張る。6月の主要7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合では、小倉将信・男女共同参画相(当時)以外の出席者全員が女性で、日本政治の象徴と批判された。自民党内の女性議員の比率は約1割。民間への働きかけはもちろん、足元の状況打開に向け手腕が問われる。一方、政権の掲げる「異次元の少子化対策」は、今後が正念場だ。児童手当の拡充などを盛り込んだ「こども未来戦略方針」は6月に閣議決定。しかし、24年度から3年間で集中的に実施していく「加速化プラン」の具体的な財源確保策は、今年の年末まで先送りされた。政府は社会保障の歳出削減や、社会保険の仕組みを活用した「支援金制度(仮称)」の創設などによって賄う目算だが、痛みや負担増を伴うもので、今後本格化する与党や経済界との調整は難航をきわめそうだ。来年の通常国会には、少子化対策の関連法案の提出も予定する。野党から厳しい質問が飛ぶことも必至だ。こうした状況に、こども家庭庁では複数の幹部が、組閣前から「安定感のある大臣でないと乗り切れない」と漏らしていた。子ども政策自体の評判も芳しくない。子ども連れや妊婦らの優先レーン「こどもファスト・トラック」の全国展開や、子育てしやすい社会づくりに携わる「こどもまんなか応援サポーター」のサッカー・Jリーグとの連携など、本格実施を前にした関連施策がSNS上で批判を浴びた。朝日新聞が7月に実施した全国世論調査(電話)で、少子化対策の取り組みを4択で尋ねると、「評価しない」が「あまり」「全く」を合わせて65%を占めた。2児を育てる新担当相が、どこまで幅広い世代に少子化対策への理解を広げられるかも問われる。

*3-2: https://digital.asahi.com/articles/ASR9F72G8R9FUTFK01H.html?ref=commentplus_mail_top_20230916&comment_id=17922#expertsComments (朝日新聞 2023年9月14日) 女性登用への消極姿勢を転換 支持率上げ解散、首相が描く再選戦略
 岸田政権の新たな布陣がスタートした。岸田文雄首相が女性登用への消極姿勢を転換させたのは、年内でも衆院解散できるよう低迷する支持率を好転させる狙いがある。ただ、新閣僚はそれぞれに重い課題を抱え、その力量が問われる。13日夜、内閣改造を終え、官邸での会見に臨んだ首相は自信に満ちあふれた表情で語った。「女性ならではの感性、共感力を十分発揮して頂くことを期待したい」。今回、際立つのは女性の積極的な登用だ。内閣では過去最多に並ぶ5人を起用し、改造前より3人増やした。男性ばかりだった自民党4役の人事では小渕優子氏を選挙対策委員長に就けた。首相は周囲に「女性閣僚を増やしたい」と漏らしていた。8月の朝日新聞の世論調査での内閣支持率は33%。女性を増やすことで支持率を好転させたい思惑がある。「女性」を前面に押し出して支持率回復につなげた例はある。安倍晋三元首相は2014年の改造で新たに「女性活躍担当相」を設け、女性議員を充てた。直後の女性の支持率は前月の36%から44%に回復。党中堅幹部は今回の女性登用について「首相はいつでも衆院解散のカードを切れるよう組み立てた」とみる。首相が外遊先での会見で「必要な予算に裏打ちされた思い切った内容の経済対策を実行したい」と語ったことで、秋の臨時国会での補正予算成立後、解散に踏み切るのでは、との臆測も出る。首相も周囲に「解散は常に考えている。人事と経済対策をやってからだ」と語り、当面の世論の動向を慎重に見極める構えを示している。衆院解散は来秋の総裁選での再選戦略と大きく関係している。安倍元首相は14年12月に衆院選を行い、与党を大勝に導くと、翌15年秋の総裁選では無投票で再選を果たし、7年8カ月に及ぶ長期政権の足場を築いた。総裁選までそう遠くない時期に衆院選で勝利したことから、国民から選ばれたばかりの総理総裁を、内輪の権力闘争で代えるわけにはいかない、という理屈が働いた。ただ、今回の人事が支持率好転につながるかどうかは不透明だ。女性登用の象徴的存在で首相が会見で「選挙の顔」とまで称した小渕氏には、「政治とカネ」をめぐる説明責任の問題がくすぶる。ベテラン議員は「過去の問題がクローズアップされた影響がどうなるか」と気をもむ。各派閥の意向に沿った順送り人事の側面も強い。当選4回の衆院議員は、衆院解散の有無にかかわらず、総裁選を無風ですませられるよう各派に秋波を送ったとみて、こう揶揄(やゆ)する。「女性を増やしてごまかした感じだが、実態は『人事処遇したので総裁選よろしくね内閣』だ」
●「世襲」大臣は2人増の8人
 今回の内閣改造で首相を含む大臣20人のうち、実の父か母が国会議員だった、いわゆる「世襲」の大臣は8人で、約1年前に発足した第2次岸田改造内閣の6人から2人増えた。首相は祖父の正記氏、父の文武氏ともに衆院議員で、財務相に留任した鈴木俊一氏は善幸元首相の長男だ。こども政策・少子化相として初入閣した加藤鮎子氏は、岸田派(宏池会)会長だった加藤紘一元官房長官の三女。地方創生相で初入閣の自見英子氏も、元郵政改革担当相の庄三郎氏を父に持つ。

*3-3-1:https://news.yahoo.co.jp/articles/e852bbc5e07d95a1a0958e9be74c20cd5c6d5300 (Yahoo、ハフポスト 2023/9/14) 「女性ならではの感性」はなぜ問題?ステレオタイプの助長や無意識の偏見も
 「女性としての、女性ならではの感性や共感力を十分発揮していただきながら仕事をしていただくことを期待したい」ー。9月13日に発足した第2次岸田第2次改造内閣を巡り、岸田文雄首相の記者会見での発言が波紋を呼んでいる。発言は、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を誕生させた理由について問われた際に出たもので、Xでは「女性ならでは」がトレンド入り。「使い古されたステレオタイプな表現」などと批判されている。では、「女性ならでは」といった表現はなぜ問題なのか。新聞労連の専門チームがまとめた著書「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」(2022年)からポイントをまとめる。
●「女性ならではの感性や、あるいは共感力」
 第2次岸田第2次改造内閣では、上川陽子氏(外務大臣)、土屋品子氏(復興大臣)、加藤鮎子氏(内閣府特命担当大臣・少子化対策)、高市早苗氏(同・経済安全保障)、自見はなこ氏(同・地方創生)がそれぞれ就任した。5人の女性閣僚は過去最多タイだが、この数字は第1次小泉内閣(2001年)、第2次安倍改造内閣(14年)と変わらない。岸田首相は9月13日の記者会見で、内閣改造の実施を報告。冒頭、 「新しい時代を国民の皆様と共に創っていく『新時代共創内閣』である」とした上で、女性閣僚をこう紹介した。「こども・子育て政策や女性活躍は、こども・子育ての当事者でもある加藤鮎子さんに担当してもらいます」「土屋品子復興大臣には、女性ならではの視点を最大限にいかし、被災地に寄り添った復興策に腕を振るってもらいます」。さらに、フジテレビの記者から「5人の女性閣僚を起用した考え」について聞かれると、次のように回答した。「あくまでも適材適所。我が党の中に女性議員は少ないという指摘があったが、より増やしていかなければいけないという問題意識は認識している」「現在活躍している女性議員もそれぞれ豊富な経験を持ち、優秀な人材はたくさんいる。今回、経済、社会、外交・安全保障の3つの柱を中心に政策を進めていくために活躍できる方を選んだ」。「ぜひ、それぞれの皆様に、女性としての、女性ならではの感性や、あるいは共感力、こうしたものも十分発揮していただきながら仕事をしていただくことを期待したい」
●ジェンダー表現について
 この「女性ならではの感性」はXでトレンド入りし、ジェンダー平等の観点から発言を疑問視する声も多くみられた。では、岸田首相の発言の問題点は何か。新聞労連の「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」から確認する。このガイドブックは、日本のジェンダー平等に強い危機感を感じている現役の記者たちが執筆。「女性らしさ」などという表現を使ってきたメディアの反省点も踏まえ、ジェンダー表現のリテラシーを社会全体で高めることを目的としている。
●ステレオタイプの助長や無意識の偏見
 まず、岸田首相の発言であった「女性ならでは」という表現については、「『女性ならできて当然』というステレオタイプな考え方を助長する」と指摘している。例えば、育児関連商品の開発談で「女性ならではの発想」、女性管理職について「女性特有の気配り」といった表現がある。しかし、これらの表現は「女性は育児をするもの」、「女性は気配りしなければならない」というステレオタイプな考え方を助長してしまう。そして、たとえ発言した人に差別する意図がなかったとしても、「無意識の偏見をばらまき、追認している」ことにつながるという。これは「マイクロアグレッション(微細な攻撃)」と呼ばれており、「使う側に差別的な意図はなくとも、現状の差別的な状況を追認し、多くの人を苦しめる土台となってきた」と指摘している。つまり、「女性ならでは感性」という岸田首相の発言自体が、現状の差別的な状況を追認し、ステレオタイプな考え方を助長していることになる。
●自分も当事者だという意識
 このようなことから学ぶことは何か。ガイドブックでは、「自分も当事者の視点が必要だ」と訴えている。ジェンダーは性別に関係なく、誰もが当事者となるテーマだからこそ、男性も自分事として考えていかなければならない。また、意思決定の場に女性がいる割合も重要という。ある結果を得るのに最低限必要な数「クリティカルマス」という言葉があるが、組織の中での比率が3割を超えた時に主張が実現すると言われている。日本政府が「指導的地位の女性比率を30%」という目標を掲げているのも、このためだ。なお、第2次岸田第2次改造内閣では、19の閣僚ポストのうち女性は5人。26%で、3割に達していない。ガイドブックの編集チームは「多様な視点が確保されれば、一人一人の『らしさ』が大事にされ、暮らしやすい社会につながる。だからこそ、男性優位組織の過去の成功体験に基づいた構造を変える必要がある」と言及している。

*3-3-2:https://www.asahi.com/thinkcampus/article-100913/?cid=pcsp_top_infeed (朝日新聞 2023.11.8) 理工系「女子枠」、導入する大学の狙いは? 「男女の視点の違いで、現場に技術革新を」
 2024年度入試では、理工系の学部を中心に「女子枠」を設ける大学が多く見られます。「女子だけを優遇するのか?」など批判の声もあるなか、なぜ理工系に女子を増やす必要性があるのでしょうか。総合型選抜(女子)をスタートする東京理科大学に、新しい入試の形を始める背景や、どんな人に入ってもらいたいのか、期待することなどを聞きました。
●意欲と向上心を持つ最大48人を募集
 科学技術の分野で活躍する女子を増やそうと、総合型選抜や学校推薦型選抜で、女子に限定した「女子枠」を設ける大学が増えています。2024年度入試から「総合型選抜(女子)」をスタートする東京理科大学では、どのような経緯で導入を決めたのでしょうか。井手本康副学長はこう話します。「わが国では現在、特に理工系分野で女子の人材育成が必要とされています。そこでダイバーシティーの推進に力を入れている東京理科大学でも、特に女子の少ない工学系3学部16学科に『総合型選抜(女子)』を設け、理工系分野への女子の進学を後押しすることにしました。まずは大学全体の入学定員の1.2%弱にあたる各学科3人、計48人までの範囲で、将来的にリーダーシップを発揮する人材として、意欲や向上心のある女子学生を受け入れたいと考えています」選考方法は、調査書や志望理由書などで書類審査を行ったうえで、面接・口頭試問と小論文を実施します。意欲や目標、数学と理科に関する基礎知識、科学的な観点などから、総合的に見て合否を判断します。「大学入試はゴールではなく、人生で成長していくための通過点の一つです。意欲や目標がある人ほど、大学入学後もより自分を高めていけるでしょうし、リーダーシップを発揮する人材になり得るでしょう。総合型選抜は受験生の志望動機などを重視する選抜方法ですから、『東京理科大学でこれを学びたい』『将来こうなりたい』といった意欲や目標があり、本学の学びを通してそれを高めていける学生を見極め、歓迎したいと考えています」(井手本副学長)
●多様性がさらなる技術革新につながる
 理工系学部の女子が増えることで、大学はどう変わっていくのでしょうか。「私は化学が専門ですが、女性は男性が気づかないようなことに気づいたり、ものの捉え方が少し違っていたりと、男性と女性とでは視点や観点が異なることを日々実感しています。研究をしていく上で大切なのは、さまざまな角度からの気づきです。意欲や向上心のある女子が増えることで学生にもいい刺激になるでしょうし、研究や開発の現場でも今までになかったような技術革新が起こると期待しています」(井手本副学長)。理工系女子のロールモデルが少ないため、就職や卒業後のことを心配する保護者がいますが、今は理工系の女子は活躍の場が多く、企業から引く手あまたの状況にあります。 「女子が少ない学問分野は女子には不向きだというわけではありません。『総合型選抜(女子)』は大学からの歓迎の証しだということを、高校の先生やご父母の方にも知っていただきたいです」(井手本副学長)
●2024年度入試は「女子枠」の新設ラッシュ
 2024年度入試では、東京工業大学、東京都市大学なども女子枠を新設します。東京工業大学は、2025年度入試で女子枠を募集人員全体の約14%にあたる143人まで広げるということでも話題になっています。また、国内の大学で最初に女子枠を設けた名古屋工業大学も2024年度入試で女子枠を拡大するほか、奈良女子大学は2022年度に国内の女子大学では初となる工学部を開設するなど、女性のエンジニアや研究者を育てていこうという動きが全国で活発化しています。東京理科大学では、「総合型選抜(女子)」の動向を見つつ「まずはスモールスタートで、効果検証を行いながら、今後は他の学科や女性に限定しない形への展開も検討していきたいという考えもある」と井手本副学長は話します。大学にとって女子枠の拡大は、意欲的な女子が入学することで、理工系分野の活性化を図るだけではありません。「自分は何を学びたいか」という意欲や目標を重視した入試に移行していきたいということが背景にあるようです。

*3-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15746023.html?iref=comtop_Opinion_03 (朝日新聞社説 2023年9月20日) 女性起用ゼロ 「活躍促進」は口だけか
 首相官邸のひな壇に、ともに並ぶ二十数人が男性ばかりという光景が、異様だとは想像できなかったのだろうか。過去最多に並ぶ5人の女性閣僚が任命された内閣改造から一転、副大臣26人と政務官28人の計54人の人事では、女性の起用はゼロとなった。岸田首相は改造後の記者会見で、自民党が「女性議員の活躍促進を最重要課題に掲げた」と述べたが、口だけと言われても仕方あるまい。多様な国民の意見を政策決定に公平・公正に反映させるために、政治分野における女性の参画拡大は特に重要である――。20年末に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画にそう記したのは、他ならぬ政府自身である。指導的地位に占める女性の割合は、「20年代の可能な限り早期に30%程度」とするとした。第4次計画の「20年に30%程度」から後退した、この目標にすら逆行するようでは「政治分野が率先してあるべき姿を示す」という計画の文言も空しく響く。首相は「(政務三役を)チームとして人選を行った結果」であり、女性2人を起用した首相補佐官も合わせれば、「老壮青、男女のバランス」はとれているという。しかし、実際に考慮したのは、各派閥の要望であり、派閥間のバランスだろう。自民党には現在、衆院21人、参院24人の計45人の女性議員がいるが、推薦名簿に女性を入れない派閥が多かったようだ。ならば、首相官邸が全体を見渡して調整を加えるのが、本来である。秘書官を含め、首相の意思決定を周辺で支える主要な官邸スタッフが、男性で占められていることが、多様性の意義に思いが至らぬ一因となってはいないか。女性に限らず、閣僚になるには、副大臣や政務官として経験を積み、専門性を磨いておくことが有用だ。女性を積極的に副大臣や政務官に就けることは、女性閣僚を増やす道でもある。国際的にも極めて低い水準にとどまる女性議員の数そのものを、抜本的に増やすことも不可欠だ。衆院議員に占める女性の割合は1割に過ぎず、候補者男女均等法が18年に施行された後も、改善の歩みは鈍い。特に対応が遅れていた自民党はようやく、この6月、「女性議員の育成、登用に関する基本計画」を定め、同党の国会議員に占める女性の割合を、現在の11%から10年間で30%に引き上げる目標を掲げた。看板だけに終わらぬよう、候補者の発掘からキャリア形成への支援まで、体系的な取り組みが問われる。

*3-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1129791/ (西日本新聞社説 2023/9/24) 副大臣・政務官 まさか女性起用ゼロとは
 先日の内閣改造で副大臣、政務官から女性が消えた。社会全体で女性の登用を進めようと呼びかけていたのは、岸田文雄首相ではなかったか。看板倒れも甚だしい。今回の改造で、閣僚には過去最多に並ぶ5人の女性が就任した。副大臣26人、政務官28人の人事は、一転して女性が一人もいなかった。首相は「どの閣僚にどの副大臣、政務官を付けるのか、チームとして人選した結果だ」と説明した。苦しい言い訳にしか聞こえない。内閣のチームと言うなら、閣僚に副大臣、政務官を合わせた政務三役の構成に首相が目を光らせるべきだろう。女性の適任者が見当たらない場合は、民間に人材を求めることもできるはずだ。首相による戦略的な抜てき人事がある閣僚に比べると、副大臣や政務官は自民党の派閥が推薦した議員の中から選ぶ傾向が強い。当選回数や衆院、参院のバランスにも配慮する。今回はそれを踏襲したとみられる。国土交通相の留任にこだわった連立与党の公明党も、女性の政務三役起用は重視しなかったのだろう。政府は2020年に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画で、指導的地位に占める女性の割合について「20年代の可能な限り早期に30%程度」を目標にしている。現状は政務三役73人のうち女性は約7%でしかない。昨年8月の内閣改造時の約18%から大きく後退している。首相は内閣改造をした13日の記者会見で、女性閣僚について「女性ならではの感性や共感力も十分発揮し、仕事をしていただくことを期待したい」と述べ、批判を受けた。性別による偏見、古い役割分担意識を図らずも露呈してしまった形だ。そもそも、女性比率が2割に満たない国会議員の構成を変えなければならない。政治分野における男女共同参画推進法は、男女の候補者ができるだけ均等になることを目指し、政党に目標設定を求めている。自民党は6月、女性の割合を現在の約12%から今後10年間で30%に引き上げる目標を打ち出した。新人女性の衆院選立候補予定者に100万円を提供し、資金面の支援策を拡大する。問題は候補者調整だ。小選挙区の公認候補は1選挙区1人に限られるため、現職を優先する。その大半を占める男性を女性に交代させるのは容易でない。比例代表であれば、女性を優先して名簿の上位にすることができる。議席の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」は検討に値する。政治活動や選挙運動中のハラスメントは女性が被害に遭いやすい。男性中心の政治風土を改め、女性が力を発揮しやすい環境づくりに与野党で取り組むべきだ。その先頭に立つ自覚を各党のリーダーに求めたい。

*3-6:https://news.yahoo.co.jp/articles/8aca1dea8d63dcf038252e2b00b6d6418d46ec32 (Yahoo 2023/10/9) 「埼玉のぶっ飛び条例」自民党提出の埼玉県虐待禁止条例案に反対するネット署名に賛同が拡大
 小学生3年生以下の子どもを自宅などに残したまま外出することは「虐待」に当たるとして禁じるなどした虐待禁止条例案が、13日に埼玉県議会の本会議で採決が行われることを前に、採決に反対するオンライン署名への賛同が広がっていることが分かった。オンライン署名サイト「change org.」では9日午後2時までに、7万人超が賛同の意を示した。サイトによると、9日だけで1万8000人近くが賛同したとしている。8日には「留守番禁止条例」がSNSのトレンドワードになったが、9日にも「埼玉県虐待禁止条例」がトレンドワードになるなど、関心が集まり続けている。同条例案は、埼玉県議会最大会派の自民党が9月定例議会に提出した。自家用車内に児童が放置されて死亡するケースなどが全国で相次ぐ中、こうした事案を防ぐ目的としている。内容は「小学校1年生から3年生だけでの登下校」や「18歳未満の子どもと小学校3年生以下の子どもが一緒に留守番をする」「小学生だけで公園で遊びに行く」「児童が1人でお使いに行く」などの行為を「虐待」として禁じるもの。6日に県の福祉保健医療委員会で可決された。13日の本会議で採決が予定され、可決される見通しになっている。SNS上には「埼玉のぶっ飛び条例、共働きで子育てをすることを想定すれば現実的ではないことなんて容易に分かるだろうに、そうならない人達が政治を回していることが見えたよね」「何を考えたらこんな条例案を可決しようと思えるんだろう」「埼玉県民の子育て世代を虐待することになるのでは?」など、条例案の内容や、提出した自民党の対応にも批判が相次いでいる。

<一般社会における女性登用について>
*4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230815&ng=DGKKZO73590370U3A810C2EP0000 (日経新聞 2023.8.15) 管理職、女性は12.7% 厚労省調べ 昨年度、国際的には低水準
 企業の課長相当職以上の管理職に占める女性の割合が2022年度は12.7%だったことが厚生労働省の「雇用均等基本調査」で分かった。過去最高を更新したものの、21年度からの上昇幅は0.4ポイントと限定的で、国際比較では低い水準にとどまる。22年10月時点で、従業員が10人以上いる全国の企業6000社を対象に調査した。企業規模別では従業員数が10~29人の企業が21.3%と最大だった。300~999人の企業は6.2%、1000~4999人の企業は7.2%、5000人以上の企業は8.2%といずれも1割に満たなかった。大企業における女性管理職の割合は総じて低い傾向にある。全体の数字でも国際的に低い水準が続いている。労働政策研究・研修機構によると、21年の日本の女性管理職割合は13.2%だった。スウェーデンは43.0%、米国は41.4%、シンガポールは38.1%と欧米など主要15カ国で最も低かった。政府は30年までに東証プライム市場に上場する企業の女性役員の比率を30%以上とする目標を打ち出している。22年からは常用労働者301人以上の企業に男女の賃金差の公表も義務づけた。厚労省の担当者は「女性管理職の登用は息の長い取り組みであり、引き続き登用率の向上を呼びかけていきたい」と話す。

*4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231019&ng=DGKKZO75369360Y3A011C2KE8000 (日経新聞 2023年10月19日) 再考 セーフティーネット(下) 雇用の自律的選択こそ必須 神吉知郁子・東京大学教授(かんき・ちかこ 77年生まれ。東京大法卒、同大博士(法学)。専門は労働法、最低賃金などの賃金規制)
<ポイント>
○男性稼ぎ主モデルへの依存は持続不可能
○無限定な働き方が多様性を妨げる要因に
○日々の労働時間予測・管理の可能性重要
 セーフティーネット(安全網)は社会保障制度だけではない。稼働能力のある現役世代にとって、生活保護はほとんど使うことが想定されない最終手段だ。実際に安定した生活基盤を提供する1次的セーフティーネットとして機能しているのは雇用だといってよい。労働力調査(2023年4~6月)によると、就業者約6747万人のうち、雇用されている者は約6067万人と9割に及ぶ。雇用は労働者の経済的生活を安定化させ、社会資源の分配を果たす。同時に能力や技能を発揮して対価を受け取ることで、労働者が保護の客体ではなく主体的に自己を確立し、自尊心や存在意義を確認する場や、成長の機会や人とのつながり、居場所を提供し、孤立・孤独を防ぐ効果も有する。社会にとっては、税や社会保険などのより大きなセーフティーネットを担う基盤ともなる。従って現役世代のセーフティーネットを再考するにあたっては、いかに良質な雇用を確保するかが最重要課題の一つだ。これまで良質な雇用の理想とされてきたのは、大企業の正社員だろう。定年までの長期の雇用保障を前提として、年功的に上昇する基本給に加え、手厚い手当により住宅の取得や教育投資を可能とし、労働者と家族の生活を支えてきた。1970~80年代には、男性稼ぎ主が主婦と子ども2人を養う世帯が標準モデルとされ、社会保障も労働者本人の厚生年金だけでなく第3号被保険者制度や遺族年金制度などによりこのモデルを補強してきた。ではこの失われつつある「古き良き」スタイルに回帰し、拡大を目指すべきか。答えは否、既に不可能だ。晩婚・非婚化、超高齢化、少子化という不可逆な社会の変化は「標準」世帯を遠い過去のものとした。労働力の先細りや教育水準の高まりを考慮すれば、性別や年齢、婚姻状態を問わず、より多様な人々に健全な雇用機会を確保することが必要になる。そのためには、負の側面に目を向けねばならない。日本型雇用慣行における労働者の標準モデルは、自分自身や家族のケア責任を負わず、仕事に無制限に時間と労力を割ける無限定正社員だった。こうした価値観は健康障害や格差の固定と増大、多様性の阻害といった弊害ももたらしてきた。まず労働者本人は、安定雇用と引き換えに、長時間労働や転居も伴う頻繁な異動を甘受せねばならない。法的には19年まで絶対的な労働時間上限がなく、過重労働に歯止めはかからなかった。判例は企業に広範な人事権を認め、転勤命令を拒否した場合には懲戒解雇も有効としてきた。必ずしも長期雇用や高待遇が保証されない企業であっても、その解釈は変わらない。22年度に労災と認定された過労死など(脳心臓疾患、精神疾患)は904件だが、請求件数は3486件にのぼり、健康障害はより多いと考えられる。職場のハラスメントを巡る紛争も増加傾向にある。生活を支えるはずの仕事がストレスを生み、健康を害し生命を失う原因にもなっている。一方、仕事優先の無限定な働き方が求められる労働者には恒常的な他者のケアが難しく、しわ寄せは家族に及ぶ。ケア責任を引き受けるパートナー側の職業生活に制限がかかる。性別役割分業の実態もあり、この影響は女性に大きく出る。女性の労働力率が出産・育児期に落ち込む、いわゆるM字カーブは改善傾向とはいえ、出産離職率はいまだに約3割に及ぶ。また女性が正規雇用で働く割合は20代後半の約60%がピークで、年齢上昇につれて低下するL字を描く。そして女性労働者の過半数は非正規で働いている。日本では男性の有償労働時間が突出して長く、世界最長である(図参照)。その裏返しとして、家事・育児などの無償労働時間は最短で、男女格差は5.5倍に達する。経済協力開発機構(OECD)加盟諸国の男女格差はほとんど2倍未満だ。長時間無限定労働をスタンダードとする日本型雇用慣行の下では、構造的にワークがライフの、ライフがワークの足かせになってきたのである。もっとも、非正規の処遇が十分であれば、ケアのニーズに合わせた働き方はむしろ多様性の一環と評価できる。例えばパートタイム労働者にフルタイムとの比例的な待遇を保障できれば、格差問題はそれほど深刻ではないかもしれない。だが正社員の本質がフルタイムよりも無限定性にあるとみれば、単純な時間での比較はそぐわない。そして戦後の非正規労働の典型が主婦パートだったため、被扶養者であり家計補助者にすぎないという想定のもと、多くは最低賃金を参照するなど、正社員とは全く異なる制度理念で処遇が決定されてきた。労働契約が有期の場合は、雇用が不安定なため交渉力も弱く、処遇改善の手段をもちえない状況に置かれる。生涯未婚率が高まり単身世帯も増えるなか、様々な事情で働き方に制約のあるすべての人に「セーフ」な雇用機会を保障するには、正社員も含めた働き方の見直しが必須だ。まずは時間外労働を前提とせず、契約で決めた労働時間を守って、十分な生活時間と処遇を確保することだ。労働基準法の上限はいわゆる過労死基準であり、これだけに依拠しては健全な生活は維持できない。休暇も有効だが、自分のケアを他人に任せず仕事と両立でき、共働きやシングルで子育てをしながら持続可能な働き方に転換するには、日々の労働時間の予測、コントロール可能性こそが重要だ。本来的には、時間という貴重な資源の処分がほぼ使用者側に委ねられるという契約解釈自体に再考の余地がある。より労働者の意思を反映した労働条件の決定・変更も課題だ。契約である以上、条件の決定・変更は合意ベースが原則だが、司法判断は使用者の一方的な変更余地を広く認めてきた。特に転勤命令については、労働者の不利益が通常甘受すべき程度かを権利濫用(らんよう)判断の基準としつつ、それが認められたのは家族全員に疾病や障害があり、他に介護者がいないような深刻な場合ばかりだった。現在の社会状況に即して基準を見直し、根本的には変更を望まない労働者の選択が尊重されるべきだろう。また正規・非正規の労働条件格差については、労働契約法などにより不合理な格差が禁止されてきた。しかし昇進や異動といった職務の変更の範囲に正社員との違いがある場合には、特に基本給格差の不合理性は認められないケースがほとんどだ。ここでも正社員の働き方の無限定性がネックとなる。結果的な賃金格差のみならず、評価の仕組みを見直すことが格差是正の手掛かりとなるはずだ。雇用における労働者の自律性確保は、セーフティーネットを自らの手で張ることにつながり、社会保障による再分配では実現できない価値をもつ。過重労働や性別役割分業に依存せず、自律的選択を尊重する雇用のあり方が望まれる。

<外国人の登用について>
*5-1-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231124/k10014267741000.html (NHK 2023年11月24日) 技能実習生制度を廃止 「育成就労制度」に名称変更 最終報告書
 厳しい職場環境に置かれた技能実習生の失踪が相次ぎ、人権侵害の指摘があるとして、政府の有識者会議は今の制度を廃止するとした最終報告書をまとめました。新たな制度は人材の確保と育成を目的とし、名称も「育成就労制度」に変えるとしています。技能実習制度は外国人が最長で5年間、働きながら技能を学ぶことができますが、厳しい職場環境に置かれた実習生の失踪が相次ぎ、人権侵害の指摘があるなどとして、政府の有識者会議は今の制度を廃止するとした最終報告書をまとめました。それによりますと、新制度の目的をこれまでの国際貢献から外国人材の確保と育成に変え、名称も「育成就労制度」にするとしています。そして、基本的に3年で一定の専門性や技能を持つ水準にまで育成します。専門の知識が求められる特定技能制度へのつながりを重視し、受け入れる職種を介護や建設、農業などの分野に限定します。一方で、特定技能への移行には、技能と日本語の試験に合格するという条件を加えます。また、これまで原則できなかった別の企業などに移る「転籍」は、1年以上働いたうえで、一定の技能と日本語の能力があれば同じ分野にかぎり認めることにしています。期間をめぐっては2年までとすることも検討されましたが、制度が複雑になるなどとして盛り込まれませんでした。さらに、実習生の多くが母国の送り出し機関や仲介者に多額の手数料を支払って来日していることを踏まえ、負担軽減を図るために、日本の受け入れ企業と費用を分担する仕組みを導入します。有識者会議は早ければ来週にも、最終報告書を小泉法務大臣に提出する方針です。
●農家からは新制度に期待する一方 雇用主の負担増への懸念も
 長年、技能実習生を受け入れてきた茨城県内の農家からは、新たな制度に期待する一方、雇用主の負担が増えることへの懸念の声も聞かれました。東京のホテルやレストランなどにいちごを出荷している茨城県鉾田市の農家では、20年以上、外国人材を受け入れていて、今は技能実習生など10人のインドネシア人が働いています。技能実習制度が国際貢献を目的にしながら実際は人手確保の手段になっていると指摘される中、実態にあわせた形で外国人材の確保と育成のための新たな制度となることについて、「村田農園」の村田和寿代表は「実際には労働力となっていて、その中で育成もしてきたので、実際の形に近づくことはいいことではないか」と新たな制度への期待を語りました。この農園では技能実習生ひとりひとりにアルバムを作るなど、大切に育成しているということで、村田さんは「実習生のおかげで農園の大規模化が進められ、非常に助かっています。なくてはならない存在なので、制度が変わっても雇用を続けたいです」と話しています。一方、新たな制度では、これまで原則できなかった別の企業などに移る「転籍」について、1年以上働いていることなどを要件に認めるとしていて、これが実際に広がれば人材が流出するのではないかと懸念しています。また、現在、技能実習生を新たに受け入れる際には、渡航費用や来日後1か月間の宿泊費や研修費用などで1人あたりおよそ25万円から30万円前後を負担しているということです。これに加え新たな制度では外国人が母国で送り出し機関などに支払っている手数料を受け入れ側も負担するよう求めていて、金銭的な負担はさらに大きくなる可能性があります。村田代表は「プラスで費用がかかるのは農家にとっては痛手になります。ただ、実習生のスキルアップのための研修は必要なので、現地で実習生が払っている費用を明確にするなど、適切な仕組みづくりをしてほしいです。農業が選ばれ、事業者が選ばれる環境は厳しくなっているので、受け入れる側としても改善を続けていきたいです」と話しています。
●支援団体「現場の声を聞きながら新制度を作ってほしい」
 技能実習生を支援している団体は最終報告書の内容について一定の評価をした上で、いかにサポート体制を充実させていくかが引き続き課題だと指摘します。東京 港区のNPO法人「日越ともいき支援会」では、2020年からベトナム人の技能実習生の保護などを行っています。この団体には、職場での暴力や残業代の未払い、妊娠を機に雇い止めされたといった実習生などからの相談があとを絶たず、ことしに入ってシェルターに保護した人数は127人に上るということです。技能実習制度を廃止するという最終報告書がまとまったことについて、団体の吉水慈豊代表は「30年続く中で海外からも批判されてきた今の制度をようやく見直そうという国の姿勢は評価できる」としています。一方で「これまで、パワハラやセクハラ、賃金の未払いなどの問題が生じたときにきちんと対応できる体制が整っていないことが大きな問題だった。新たな制度で認められる転籍についてはハローワークなどが支援するというが、外国人の支援に慣れていないと難しい面もある。支援体制が十分整わないまま新しい制度に向かうのは危険で、職を失ったり、今より早く失踪したりする人が続出するおそれもある」と懸念しています。そのうえで「海外の若者たちが日本にきてよかったと思える制度にしないといけない。現場の声を聞きながら新たな制度を作っていってほしい」と話していました。
●専門家「外国人側と企業側の双方に細心の配慮を」
 最終報告書について、外国人労働者の受け入れの問題に詳しい野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「長い間、人権侵害が指摘される温床になっていたのが『転籍』の問題で、非常に厳しく制限されていたが条件が緩和されることで、企業も従来以上に実習生の人権に配慮することになり、労働環境が非常によくなるきっかけとなるのではないか」と評価します。一方で、外国人側だけでなく受け入れる企業側にとってもメリットのある制度にする必要があるとして、「日本企業にとっては人材を確保していくための重要な仕組みだが、企業がコストをかけて技能を習得させる努力をしても転籍されてしまうという問題が出てくる可能性もある。その場合は、国が、支援するといったことも今後、検討材料になってくるだろう」と指摘します。そのうえで「技能実習制度ができた30年前と現在では、日本の経済的立場が変わり、以前は、国際貢献の観点から実習生を受け入れる立場だったが、賃金が上がらず、円安も進んだ結果、待遇や働く環境などを改善しないと実習生が来てくれない状況だ。今回の見直しは日本経済を支えてもらう仕組みという長期の視点で考える必要がある。具体的な制度設計の中で、外国人側と企業側の双方に細心の配慮をはかるほか、実際に動き出したあと、過重な負担を強いていると判断した場合には、柔軟に制度を見直す姿勢も必要だ」と話していました。

*5-1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/292093 (東京新聞 2023年11月25日) 結論は「丸投げ」…将来の技能実習の焦点「転籍の制限期間」 有識者会議が最終報告 議論の着地点見いだせず
 外国人技能実習制度に代わる新制度を検討してきた政府の有識者会議は24日、新制度「育成就労」の創設を提言する最終報告書を取りまとめた。焦点となっていた別の職場への「転籍」の制限期間は、現行の「3年」から「1年」への緩和を原則としつつ、当分の間は1年を超える制限を認めるなどの「経過措置」の検討を求めた。具体的な内容は盛り込まず、今後の政府・与党の対応に委ねた。政府は提言を基に新制度の詳細を検討し、早ければ来年の通常国会に関連法案を提出する方針。経過措置の内容次第では、転籍制限の緩和が限定的になる可能性もある。最終報告書は、現行の厳しい転籍制限が「さまざまな人権侵害が発生し、深刻化させる背景・原因となっていると指摘されている」と記載。新制度では、就労が1年を超えた上で日本語と技能の一定要件を満たせば、本人の意向での転籍を認めるとした。
◆「必要な経過措置を求めることを検討する」
 一方で、急激な変化を緩和するため「当分の間、受け入れ対象分野によっては1年を超える期間の設定を認めるなど、必要な経過措置を設けることを検討する」よう政府に求めた。設定できる具体的な年数や要件などは示さなかった。新制度案は「人材確保と人材育成」を目的に掲げ、労働者としての受け入れを明確にする。現行制度は「人材育成による国際貢献」を目的にしており、人手不足の現場で労働力の確保に使われている実態との乖離(かいり)が指摘されていた。就労期間は3年とし、一定の専門性を持つ外国人を対象とした「特定技能制度」の水準まで育成。現在は技能実習と特定技能の受け入れ対象分野がばらばらだが、新制度では一致させ、技能実習から特定技能に移行しやすくする。技能実習と特定技能 技能実習は「人材育成による国際貢献」を目的に途上国の外国人を最長5年受け入れる制度で、1993年に始まった。2023年6月末時点で全国に約36万人が在留する。特定技能は、人材確保が困難な産業分野に一定の専門性・技能を有する外国人労働者を受け入れる制度で、19年に開始。技能水準に応じて1号と2号がある。23年6月末時点で約17万人が在留。
◆「人材確保」と「人権保護」
 外国人技能実習制度の見直しを巡り、政府有識者会議が最終報告書で、転籍制限期間の延長などの経過措置を「検討する」と盛り込んだのは、人材確保と人権保護をてんびんにかけるような議論の着地点を見いだせなかったためだ。今後の制度設計では、外国人の人権保護が骨抜きにならないような対応が求められる。一般の有期雇用者と同様に1年での転籍を認めることは、外国人の人権保護を目指した制度見直しの根幹だった。だが、10月に新制度案のたたき台が示されると、実習生を受け入れてきた地方の事業者や自民党内から「人材が都会に流出する」などの声が相次ぎ、有識者会議は「懸念への対応が必要」と判断した。一度は制限期間を「最大2年」に延ばせる例外規定を示したが、賛否が分かれたため削除。「最大2年」の記述すら消えたことで、現行の「3年不可」に近い制限が継続される懸念も残った。経過措置の「当分の間」がどれだけ続くかも不透明だ。自民党内の緩和への根強い慎重論が制度設計に影響する可能性もある。人材確保と人権保護は相反するものなのか。外国人の人権保護を大前提にした上で、地方の不安にどう応えるべきか。政府・与党は知恵を尽くすべきだ。(井上峻輔)

*5-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230813&ng=DGKKZO73560080S3A810C2EA1000 (日経新聞社説 2023.8.13) 〈人手不足に克つ〉「選ばれる国」へ外国人基本法を
日本は外国人に「選ばれる国」になれるのか。今がまさに正念場である。選ばれるには外国人が歓迎されていると感じる環境を提供しなければならない。職場はもちろん、生活する地域社会でも外国人が共生できる教育や福祉の基盤づくりが急務だ。その礎として外国人をどのように受け入れるか、我が国の姿勢を内外に示す外国人基本法を考える時期である。
●疎外感の放置はリスク
 外国人労働者を受け入れる政策は転換点にある。6月に在留資格「特定技能」で長期就労や家族帯同ができる業種を大幅に増やし、永住に道を開いた。賃金不払いや失踪などトラブルが絶えない技能実習制度を廃止し、新制度に移行する議論も進む。技能実習は国際貢献を名目にしながらも、実質的に外国人を景気変動に伴う一時的な雇用の調整弁として扱ってきた。人手不足が恒常化した今、これでは対応できない。人権侵害が指摘される制度でもあり、早急に廃止して特定技能に一本化すべきだ。複雑になっている在留資格も整理したい。制度のわかりにくさは外国人が日本を避ける理由になりかねないためだ。日本にはすでに総人口の2%に相当する約300万人の外国人が暮らしている。外国人比率が1割ある欧州ほどには社会のあつれきはまだ目立たないが、技能実習の受け入れから30年たち、第2世代が社会に出始めている。なかには日本語がままならないまま社会に放り出され、疎外感を感じている若者もいよう。日本社会に溶け込めない外国人を放置しておくのは、欧州の移民問題のようなリスクを抱えていると考えるべきだ。それが顕在化しないうちに社会的に包摂する手立てを考える必要がある。最も重要なのが日本語教育である。多文化共生を進める浜松市は、外国人家庭を訪問して相談に応じるなど、きめ細かな支援で学校に通っていない子どもをゼロにするようにしている。だが多くの自治体はそこまで手が回らない。外国人に日本語教育が行き届かないのは、自治体やNPO任せにしてきたためだ。憲法は義務教育の対象を「国民」としているが、日本は「すべての者」への教育の提供を定めた国連人権規約と児童の権利条約を批准している。国籍を問わず、子どもに教育を受けさせるのは政府の責任である。明治の市町村合併は小学校、昭和の大合併は中学校を運営できるよう自治体を強化するのが目的だった。外国人の住民登録がない自治体はいまや全国に3つしかない。外国人がどこにいても一定の教育を受けられるようにするのが令和の公教育のあるべき姿だ。そこでは教育だけでなく、福祉なども含めて外国人受け入れのあり方を一から考えていく必要がある。これまでは移民の是非をめぐる対立から入り口で思考停止に陥っていた。「移民政策はとらない」「単純労働者は受け入れない」といった制約をいったん取り払い、日本にふさわしい外国人受け入れ制度を議論するときだ。
●共生社会は国の責務
 外国人政策を議論する日本国際交流センターの円卓会議は「在留外国人基本法」を提唱している。外国人を日本社会の一員とし、対等な社会参加で共生社会を築くことを理念に掲げる。そのための基盤整備、財源確保は国の責務とした。賛同できる。各論はさまざま議論があろう。だが、基本法で外国人を歓迎する姿勢を打ち出すことは、人口減少を日本の成長の制約とみている世界に向けて、日本は変わるとのメッセージになるだろう。企業も意識を変えなければならない。長期就労を前提に昇給・昇進や能力開発を日本人と同等にする必要がある。優秀な人材は幹部候補として育て、独立を支援するくらいの度量がないと魅力的な会社に映らないのではないか。外国人を積極的に受け入れる韓国や台湾などとの競争は激しさを増している。外国人に選んでもらえる職場づくりは、多様な人材が活躍できるオープンで創造的な企業風土につながると考えたい。豊かで活力ある経済を維持してゆくには、開放的な社会であることが前提になる。それは古来、海外との交流を深めることで発展してきた我が国の歴史そのものだ。そのDNAを呼び覚ましたい。

*5-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230826&ng=DGKKZO73919710W3A820C2EA1000 (日経新聞 2023.8.26) 留学増へ給付型奨学金拡充 来年度7割増3万人に、文科省、国際人材育成急ぐ
 海外への留学生を2033年までに年50万人にする目標の実現に向け、文部科学省は給付型奨学金の対象者を24年度に現在に比べ7割増の3万人にする方針を固めた。国際競争力向上へグローバル人材の育成を急ぐ。政府の教育未来創造会議が4月、33年までに日本人留学生を新型コロナウイルス禍前の年22.2万人から年50万人に、外国人留学生を年31.8万人から年40万人に増やすよう提言した。同省が経済面の支援策などを検討していた。派遣する留学生の奨学金を拡充するため24年度予算案の概算要求に114億円を盛り込む。留学支援の給付型奨学金は現在、交換留学など中短期の留学を支援する「協定派遣型」と、学位取得を目指す「学部学位取得型」「大学院学位取得型」などがある。協定派遣型は月額で最大10万円を支給し23年度は約1万6900人が利用している。24年度はこの受給者を約1万3000人分増やし、3万人を対象にする。最大で月11万8000円を支給する学部学位取得型、月額最大14万8000円の大学院学位取得型の受給者は23年度の600人から700人強に増やす。自治体などと連携して高校を卒業してすぐ海外大に進学する生徒らを支援する。内閣府が18年度に若者約1000人を対象に実施したアンケートによると、経済的な理由や語学力不足などを理由に「外国留学をしたいと思わない」と答える若者は全体の5割を超えた。2割程度の韓国、米国などに比べて消極性が際立つ。学位取得を目的とする留学者数は20年に4万2000人だったが、33年には年50万人のうちの15万人に引き上げたい考えだ。実現すればフランス(10万人)や米国(10万9000人)、ドイツ(12万3000人)を抜く規模となる。文科省関係者は「まずは中短期留学者の支援を充実させ、留学機運を醸成したい」と話す。高校段階での意欲喚起も重要とみており、留学情報の発信やプラン策定などを担う「留学コーディネーター」の高校への配置も進める。外国人留学生も受け入れ拡大へ日本学生支援機構に誘致戦略を立案する部署を新設する。諸外国の動向やデータなどを分析して戦略を練る。同機構によると、日本の在学者に占める外国人留学生の割合は5%。英国の20%、オーストラリアの30%と比べ低い。5月に富山市と金沢市で開催された主要7カ国(G7)教育相会合の閣僚宣言では「G7各国間の国際交流をコロナ前の水準に戻し、それ以上に拡大する」と盛り込まれた。同省はG7とともに東南アジア諸国連合(ASEAN)との大学間共同教育プログラムの策定支援や、これらの国から受け入れる留学生への奨学金を拡充する方針だ。

*5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20231120&ng=DGKKZO76206190X11C23A1KE8000 (日経新聞 2023.11.20) 経済教室外国人労働者政策の針路(上) 経済成長に寄与する制度に 橋本由紀・経済産業研究所研究員(東京大経済学部卒、同大博士(経済学)。専門は労働経済学、外国人雇用)
<ポイント>
○外国人材の技能水準が企業の生産性左右
○現政策は非高技能者割合を高める可能性
○成長企業を外国人材確保で優遇する案も
 外国人には受け入れ国の人口・経済政策や出入国管理制度が実質的な「国境」となり、就労の可否や働き方は制度や政策の調整の影響を強く受ける。同時に外国人労働者の増加は受け入れ国の労働市場にも多少の影響をもたらし、自国民の働き方も変えうる。本稿では、これまでの政策の帰結としての日本の外国人労働者の現状を踏まえつつ、これからの外国人労働政策を議論したい。図は、賃金構造基本統計調査を基に2020~22年の外国人労働者(一般労働者のみ)の所定内給与額の推移を示したものだ。専門的・技術的分野の労働者(身分系の在留資格者は含まない)と、技能実習生・特定技能外国人の賃金水準や分布は大きく異なっている。賃金分布の差異に加え在留資格取得に必要な学歴や経験の違いも踏まえると、専門的・技術的分野の外国人と技能実習生・特定技能外国人は異なるグループとみなしうる。前者を高技能者、後者を非高技能者とする分類は、多くの研究が用いる区分にも対応する。まず高技能外国人の雇用状況を確認する。筆者が連合総合生活開発研究所(連合総研)のプロジェクトで行った賃金構造基本統計調査の分析結果を紹介しよう。高技能外国人には賃金が日本人正社員と同水準かそれ以上の者が少なくない。図に示すように分散も大きい。一方で勤続年数が短くボーナス支給割合も低いことから、日本型雇用慣行の下で正社員的に働く者は少なく、専門的な職種に就きジョブ型で雇用される者が多いと推測される。次に非高技能外国人の雇用をみてみよう。図の技能実習生と特定技能外国人の所定内給与額の中央値は、20年から22年の間にそれぞれ1.4万円、3.6万円上昇し、分散も拡大している。特定技能外国人の22年の中央値(20.4万円)は、高卒非正規労働者の所定内給与額の中央値(19.2万円)よりも高い。かつて技能実習生の賃金は、事業者が立地する地域の最低賃金を目安とした相場が形成され、分散も小さかった。だが現在は、高まった技能に見合う給与を支払う事業者が増えている。転職の制限により需要独占的となっていた技能実習生の労働市場が、転職が認められる特定技能外国人の労働市場と接続されたことで競争的になりつつある。同調査では、外国人を雇用しない企業と比べ、高技能外国人を雇う事業所では日本人の賃金が高く、非高技能外国人を雇う事業所では日本人の賃金が低いことも確認できた。これは因果関係を示すものではない。しかしクリスチャン・ダストマン英ロンドン大教授らはドイツの労働市場を分析し、地域に流入した移民労働者の技能レベルに応じて企業内の生産技術が変化することを実証している。日本でも、高技能者向けの技術を使い生産性を高めた企業では賃金が高く、非高技能外国人の雇用を増やし労働集約的となった企業では生産性や賃金が停滞していた可能性がある。日本商工会議所の調査によれば、23年度に賃上げを実施した中小企業は62%だった。一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる製造業分野の中小企業支援調査では、97%の事業所が自社で技能実習を修了した者を特定技能1号として雇用した際に月給額を引き上げていた。ここで働きや貢献に応じた賃上げが日本人労働者と特定技能外国人で同時になされなければ、特定技能外国人の賃上げは制度の要請によるもので、生産性や業績の向上を伴わない防衛的賃上げである可能性が示唆される。各都道府県の技能実習生と特定技能外国人の在留者数をみると、18年時点では全技能実習生の約6割が、22年時点の最低賃金が1千円未満の自治体に在留していた。21年以降、全特定技能外国人のうち、これらの自治体に在留する者は5割を下回っている。その結果、22年には最低賃金が1千円以上の都府県では、非高技能労働者総数に占める特定技能外国人の割合は有意に高い傾向があった。特定技能制度創設時に懸念された都市部への移動は既に顕在化の兆しがある。多くの先進諸国では、経済成長に貢献する人材として高技能移民の就労や定住を推進し、非高技能移民は適所で受け入れつつ定住は制限する政策をとる。翻って現在の日本は、専門的・技術的分野の人材以外の外国人労働者にも定住への道を開きつつあり、外国人の受け入れでも大規模な「量的緩和政策」に転じている。そこでは、外国籍者の在留の範囲や期間など線引きに関する議論は後退し、外国人労働政策の新たな課題は求める人材にいかに日本を選んでもらうかとなる。高技能外国人と非高技能外国人の新規入国者数は12年にはほぼ同数だったが、22年は後者が前者の2.3倍となった。現在の日本は、非高技能労働者により選ばれている。この傾向が続けば、非高技能者が日本の外国人労働者の多数派となる日は遠くない。こうした傾向が生じたのは、現行政策が外国人の質と量をともに求めても、技術革新に貢献しうる高度人材には日本で就労する魅力が乏しいからだ。非高技能者にとっても円安により賃金面では日本で働く誘因は低下しているが、門戸の広さや生活環境が評価されて在留者は急増している。10月に公表された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告案は、新制度下での職場変更制約の緩和を提案した。これが実現すれば、非高技能外国人の働きやすさが相対的に高まるため、外国人労働者に占める非高技能者の割合はさらに高まると思われる。では今後の外国人労働政策は何を目指すべきか。政府は制度を順守しない悪質な機関や企業の適正化に重きを置く考え方もある。筆者は、外国人雇用の過程で生じた課題への対処と人手確保に重きを置く方針から、経済成長というマクロの目標に沿う外国人労働政策を目指すべきだと考える。現在の政策は高技能者と非高技能者向けの政策をそれぞれの枠組みの中で適正化しようとする。政策全体の展望は見えにくく、「新しい資本主義」が掲げる人と技術への投資強化や賃上げなどの主要労働政策との直接的な関連付けもない。人材確保のために特定技能外国人の賃金を引き上げる一方で、日本人の賃金を据え置いたり設備投資を控えたりすることは、企業や経済の成長にはつながらない可能性が高い。外国人に「選ばれる国」となるだけではなく、日本人が働き続けたい日本であるためにも、まず必要なことは日本経済の成長である。そこでは、すべての労働者が満足できる水準の所得と活躍機会の提供が不可欠だ。外国人労働政策にも、賃上げや設備投資を進めて生産性を高めた企業を優遇する仕組みを導入することも一案だ。日本的雇用慣行の下で働く正社員を支える存在として外国人労働者を位置け、限定的な機会や処遇しか提供しない非成長企業は選ばれなくなるだろう。

*5-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15753499.html?_requesturl=articles%2FDA3S15753499.html&pn=3 (朝日新聞 2023年9月28日) 「弥生人」像、核ゲノム分析が変える 文化の担い手は?見直し迫られる通説
 「弥生人」とは何者か。縄文時代から日本列島に住む在来の人々と、海外から先進技術を持ち込んだ渡来人が徐々に混血しながら弥生文化を担う――。そんな人類学上の通説だった弥生人観が、近年急速に進む核ゲノムの分析で様変わりしようとしている。
■渡来人と在来人、骨格違うが共通の「縄文的」遺伝子も
 紀元前後の約千年にわたり展開した弥生時代。その幕を開けたのが、水田稲作や金属器文化を携えて北部九州沿岸部に現れた、朝鮮半島からの渡来人だ。彼らは遺跡から出土する骨の形の違いから、前代の縄文人とは姿がまったく異なるとされてきた。背が高くてすっきりした顔立ちの渡来人。対して、がっしりした肢体で彫りの深い在来系。両者は徐々に混じり合いながら現在の日本人を形作ったとされる。この説は「二重構造モデル」と呼ばれ、定説となっている。ところが、2010年代に登場した核ゲノム分析でこれが揺らぎ始めた。ゲノムとはすべての遺伝情報のこと。細胞の核が持つ情報量は、それまで分析対象の主流だったミトコンドリアDNAよりもはるかに多い。不可能と思われてきた古人骨の核の遺伝子分析を最新機器が可能にした。18年、日本人の起源をさぐる通称「ヤポネシアゲノム」プロジェクトがスタート。国立科学博物館の篠田謙一館長(DNA人類学)や、国立歴史民俗博物館の藤尾慎一郎教授(考古学)らが分析を重ねてきた。その結果、意外なことがわかってきた。渡来人の故郷である当時の朝鮮半島にも、縄文人に似た遺伝的要素を持つ人々がいたらしいのだ。つまり、二重構造モデルではまったく異質なはずの列島在来系と渡来人が、実は縄文時代以前から海を挟みつつ同じ遺伝子を共有していたことになる。研究チームはその理由を、はるか旧石器時代の東アジア沿岸部や島々に、両者のもととなった集団がいたからではないかと解釈。「(核ゲノムの分析では)骨の観察だけではわからなかった混血の度合いがわかる。従来、在地の人々に形質の異なる人々が入ってきた構図を描いてきたが、そう単純な話ではないことが見えてきた」と篠田さん。藤尾さんも「二重構造モデルも部分的な見直しが必要ではないか」という。生粋の渡来系と考えられてきた安徳台遺跡(福岡県那珂川市)の骨も縄文的要素を含んでいたことや、多量の出土人骨で有名な青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡(鳥取市)の分析を通して混血度合いのかなり異なる人々が幅広くいたことも判明。弥生時代の西日本には想像以上に、遺伝的に多様な集団が存在していたようだ。既存の枠組みにも再考を迫る。九州では骨の形をもとに、渡来系が密集する北部九州から山口県の沿岸部に対し、長崎県を中心にした縄文人直系の在地集団を「西北九州弥生人」として区別してきた。ところが下本山遺跡(長崎県佐世保市)などのゲノム分析で、このタイプにも渡来系要素を持つ「ハイブリッド」な人々がいることが明らかに。こんな例は九州中部や南部にも広がる可能性があるらしい。もはや一概に「西北九州」とまとめることが難しくなったわけだ。弥生文化の担い手は誰か。特定の文化を特定の集団だけが独占するとは限らない。だから、先進文化をもたらした渡来人がそのまま弥生社会の中核だったとみる説と、縄文以来の在来人が主体的に外来文化を取り込んで発展させたとみる説が対立してきた。藤尾さんは「核DNAの分析成果と各地の文化的様相をもっと比較検討していけば、人間集団と文化の相関関係がわかってくるかもしれない」と話す。

<有明ノリは独禁法違反ではありません>
PS(2023年12月2日追加):*6のように、公正取引委員会が有明海のノリ取引に関し、佐賀県有明海漁協と熊本県漁連の独禁法違反を認定して排除措置命令を出す方針を固め、理由は、①全てのノリを漁協や漁連に出荷することを生産者に求める「全量出荷」と呼ばれる慣行があること ②そのための誓約書を提出させていること ③生産者が独自ルートで取引することを制限していること 等が、拘束条件付き取引にあたると判断したからだそうだ。
 しかし、有明海の海苔生産は、i)漁業者全員による海岸のゴミ掃除 ii)佐賀県による森林の育成 iii)佐賀市による海水の養分管理 iv)冷凍網の干し場としての漁港前空き地の利用 v)川に除草剤・農薬・洗剤を流さない 等々、個人の生産者だけではなく地域一丸となった付加価値の高い上質な海苔づくりのための努力があって行なわれている。さらに、佐賀県では(私が衆議院議員時代に提案して)有明海苔をブランド化し、多数の小規模生産者が自由に販売すれば大規模事業者に安く買い叩かれて所得が減り、佐賀県や佐賀市に環流する税金も減るのを防ぐため、つまり有明海苔のブランドと価格を守るために、①②③の“拘束条件”をつけているのである。もちろん、「有明海苔」というブランドに入らない海苔もできるが、これもまとめて等級に分け、買い叩かれず販売するために、なるべく漁協や漁連に集めるようにしている。そのため、この“拘束条件”は独占禁止法違反にあたるものではないと、私は考える。
 なお、良い海苔ができるためには、海苔を生産している海や流れ込む川の水を汚染せず、山から栄養塩が流れてくる必要がある。以前は浅草海苔も採れていたのに今では採れないのは、東京港を行き交う船が東京湾を汚しすぎ、川から流れ込む水の水質管理もできていないからで、消費者が高すぎない価格で海苔を買えるようにするためには、多くの地域で海や川の水質に気をつけて海苔の生産量を増やすのが正攻法なのだ。そして、これは、他の水産物も同じである。

*6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15805375.html (朝日新聞 2023年11月30日) 有明ノリ全量出荷、独禁法違反認定へ 佐賀・熊本に排除命令方針
 有明海のノリ取引をめぐり、九州3県の漁連や漁協に独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いがあるとして公正取引委員会が立ち入り検査をしていた問題で、公取委は、このうち佐賀と熊本の漁協と漁連の違反を認定し、排除措置命令を出す方針を固めた。関係者への取材でわかった。命令の対象となるのは、佐賀県有明海漁業協同組合(佐賀市)と熊本県漁業協同組合連合会(熊本市)。公取委は、両者に処分案を通知しており、意見を聴いたうえで最終的な結論を出す。関係者によると、公取委が問題視しているのは、全てのノリを漁協や漁連に出荷することを生産者に求める「全量出荷」と呼ばれる慣行。誓約書を提出させるなどの方法で生産者が独自ルートで取引することを制限しており、独禁法が禁止する拘束条件付き取引などにあたると判断した。公取委は昨年6月、福岡有明海漁業協同組合連合会(福岡県柳川市)を含む3者に立ち入り検査に入っていた。福岡は問題点を認め、誓約書を廃止するなどの改善計画を公取委に提出。公取委が6月に計画を認め、違反は認定せずに調査を終了していた。一方で佐賀と熊本は取引手法の違法性を否定し、改善計画も提出していない。公取委はこうした点も踏まえ、違反認定に踏み切る方針を決めた模様だ。

<中国産の花粉がないと受粉できない!?>
PS(2023年12月2日追加):ホタテの殻むきを“加工”と呼んで、殻付きホタテを中国に輸出し、殻むき済ホタテを中国から米国に輸出していたのには驚いたが、外国人難民を移民労働者として受け入れれば、無駄な輸送費がかからず、技能レベルの低い人でも日本国内で“加工”でき、働けば日本社会の支え手になる。
 そのような中、*7のように、①「幸水(ナシ)」の授粉に使う中国産の花粉が防疫で輸入停止になり、必要な量の花粉を確保できないため、来年は幸水の減産になるかも ②佐賀県は栽培面積の約4割で中国産の花粉を使用している ③農水省は自給体制を整えるよう求めた ④佐賀県内には花粉を共有して大量に保管する仕組みがない ⑤打開策の1つとして幸水より1週間ほど早く開花する「豊水(ナシ)」の花粉の採取が検討されている 等というのも驚きだった。
 何故なら、「中国産の花粉がなければ植物の受粉ができない」ということはあり得ず、養蜂家にしばらくナシ畑にいてもらって、ナシの蜂蜜も採取すればよいからである。人間が他のナシから花粉を集めて保存したり、受粉したりすれば、それだけ労力とコストがかかってナシの値段が高くなる上、中国産の花粉がなければナシができないようなら、農水省が言うまでもなくナシを自給したことにはならず、輸送コストをかけて化石燃料を使っている。人手が足りないのなら、それこそ外国人労働者を雇えばよいし、アーモンド・レモン・オリーブ等の人手のかからない作物に転換することもできるため、生産コストを下げる工夫もしたらどうかと思った。消費者は、(贈答品でもらわなくても)果物を存分に食べるくらいのことはしたいのだから。

*7:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1151968 (佐賀新聞 2023/11/30) 佐賀県産ナシ、花粉不足に 中国で「火傷病」発生→農水省、防疫へ輸入停止、生産者、来年の減産回避へ奔走
 伊万里市などのナシの産地に、深刻な問題が降りかかっている。授粉に使う中国産の花粉が防疫のため急きょ輸入停止になり、来年の生産に必要な花粉の量を確保できない恐れが出てきた。佐賀県では栽培面積の約4割で中国産花粉を使っており、生産量の大きな落ち込みを回避しようと農家やJA、行政が対策に当たっている。農水省は8月30日、中国で火傷病(かしょうびょう)の発生を確認したとして、花粉の輸入を停止した。火傷病は花粉を介して国内に侵入する恐れがあり、同省は中国産の利用実態を調査。農家やJAに在庫があっても使用しないことや、輸入禁止の長期化を見据えて自給体制を整えるよう求めた。ナシは主に人工授粉をして着果させるが、花から授粉用の花粉を採取するのは手間がかかる。産地では高齢化や人手不足も背景に、手に入りやすい中国産を使う農家が増えていった。佐賀県内は全国に先駆けて出荷する早生種「幸水」の施設栽培の割合が多く、早い時期の授粉に間に合わせるため中国産花粉に頼る傾向がある。県によると、2022年の県産ナシで中国の花粉を使ったのは栽培面積の約4割を占め、全国平均の約3割を上回る。県、関係する市、JAによる対策会議はこれまでに3回開かれ、来年の花粉をどう確保するかが重要課題に挙がっている。県園芸農産課は「国が対策を呼びかけた時は自前で花粉を採取できる時期は過ぎていた。また県内には、花粉を共有して大量に保管する他産地のような仕組みもない」と頭を悩ませる。県は農家ができる対策として、授粉の際に花粉を節約したり、各農家のストックを融通し合ったりすることを呼びかける。ただ、こうした取り組みでも不足を補うには至らず、県が9月に行った農家へのアンケートでは、来年必要な花粉が面積で約2割分足りないという試算が出た。一つの打開策として検討されているのが、幸水より1週間ほど早く開花する「豊水」の花粉の採取だ。現在、ハウス豊水の花が咲き始める2月末ごろに向け、関係者が奔走している。約130軒のナシ農家が加入するJA伊万里の担当職員は「不足分を補うには花粉採取用の豊水の木を何十本、何百本と確保しなければならず、生産者に協力を求めるなど調整している。授粉の適期は3~4日しかなく短期勝負。技術的にも難しく、どのくらいの花粉や人手が必要か、詰める作業をしている」と話す。影響をいかに抑え、生産量の減少をゼロに近づけられるか。産地全体で知恵を出し、助け合うことができるかが鍵を握る。
■火傷病 ナシやリンゴなどの果樹が感染し、枝や葉が火にあぶられたように枯れ、木全体に及ぶ場合もある。火傷病菌を根絶できる有効な防除方法が確立されていないため、感染すれば伐採による防除が必要になる。日本での発生は確認されておらず、韓国や中国など約60カ国・地域で発生している。

<吉野ケ里遺跡で青銅器鋳型出土>
PS(2023/12/7追加):*8のように、①吉野ケ里遺跡(佐賀県神埼市)で「細形銅剣(銅矛)」と呼ばれる最も古いタイプの蛇紋岩の鋳型が出土した ②九州北部は日本で最初に青銅器生産を始めた地域 ③このような鋳型は佐賀9遺跡20点、福岡6遺跡30点、熊本2遺跡4点出土 ④鋳型の石材を調べることで朝鮮半島との関わりが考察でき、青銅器生産の技術がどう伝わったかを考える材料になる とのことだ。確かに、日本人は貿易で手に入れたものを国内生産したがるため、青銅器も同じであろうし、遺跡からの出土品も韓国と北部九州で類似しているため、九州北部は韓国を通じてユーラシア大陸と繋がっていたのだと思われる。

*8:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1154069 (佐賀新聞 2023/12/5) <吉野ケ里遺跡・青銅器鋳型出土>生産技術伝来解明の材料に 蛇紋岩製「全国でも初の出土例」、「謎のエリア」で発見
 吉野ケ里遺跡(神埼市郡)の北墳丘墓西側にある「謎のエリア」で見つかった鋳型。鋳型に刻まれた形状から、「細形銅剣(銅矛)」と呼ばれる最も古いタイプと判明した。県文化課は「佐賀平野の遺跡の出土例が今回増えたことで、青銅器生産の技術がどう伝わったかを考える材料になる」と指摘する。県によると、このような最古級の鋳型は佐賀の9遺跡から20点、福岡の6遺跡から30点、熊本の2遺跡から4点出土している。福岡にある一つの遺跡から16点が一気に見つかったケースもある。九州北部は日本で最初に青銅器生産を始めた地域であり、その研究を進める材料の一つといえる。今回、全国でも出土例がないという蛇紋岩の鋳型が見つかったことについて、県文化課は「あまり注目されてこなかった石材を調べることで、朝鮮半島との関わりも考察できる」とする。一方、今回の発見で、吉野ケ里遺跡の南側にあったとされる「青銅器工房」が北側にも存在する可能性が出てきた。県文化課は、関連遺物が日吉神社境内跡地から複数見つかったことをその理由に挙げて、「鋳造に使われた土器製容器が見つかった点が大きい。生産設備の近くに捨てられるケースが多いから」とした上で「昭和60年代、鋳型の破片が、今回の出土地点からさらに西側で出土している。どこかからもたらされたというこれまでの考察を改め、製造拠点があったという可能性が高くなった」と述べた。

<日本の15歳、数学的リテラシーに課題>
PS(2023年12月7日追加):*9-1は、①政府は3人以上の子がいる多子世帯は2025年度から所得制限なく子の大学授業料を無償化する方針 ②教育費の負担軽減で子をもうけやすくする ③大学生のほか短期大学・高等専門学校等の学生も含める ④現在、年収380万円未満の世帯は授業料を減免したり、給付型奨学金を出す支援制度がある ⑤政府は、2024年度から年収600万円までの中間層の多子世帯等に授業料を減免すると発表した ⑥今回は、多子世帯は所得制限なく無償化 ⑦政府は近く3.5兆円規模の財源確保策も示す方針だが、社会保障の歳出削減も必要になる としている。
 しかし、①②④⑤⑥については、多子世帯の親に恩恵がある点で「とにかく生んでくれ!」という時代錯誤の政策である。また、子育て支援策が重複してきたため、子の育成を中心に考えて所得制限を設けず国公立大学の授業料を1万円/月以下にし、優秀にもかかわらず親の世帯所得が低いため進学が困難な子には奨学金を支給すればよい。国公立大学に絞る理由は、国公立大学はどの受験生にも英数国社理の試験を課し、大学入学前に常識として必要な最低限の知識を身につけることを促すからである。従って③も、本当に勉強して向上したい人だけを優遇すれば良いという意味でやりすぎだ。さらに、⑦の子育て財源に社会保障の負担増・歳出削減も取り沙汰されているが、社会保障間で融通しようとするのは不合理だ。何故なら、自立して社会を支え、社会を引っ張れる大人を育てるために教育支援をするので、教育支援をしっかり行なえば自立しているべき生産年齢人口の大人に景気対策のバラマキをする必要はないからだ。
 *9-2は、⑧各国の15歳を対象とする2022年学習到達度調査結果を経済協力開発機構が発表 ⑨日本の数学の授業は「日常生活とからめた指導を受けている」と答えた割合が低い ⑩「先生は日常生活の問題を数学でどう解決できるか考えるよう言ったか」は日本36・1%・OECD加盟国平均51・9%で加盟37カ国中36位 ⑪「先生は日常生活で数学がどう役立つか示して見せたか」は日本28・0%で37カ国中最低 ⑫その理由は各大学の個別入試は数式や図形のみを使った従来型の問題が多く、対策を優先すると演習が増えて社会事象とからめた問題に時間をかける余裕がないから ⑬「数学が大好きな教科か」は「そう思わない」が6割でOECD平均より高い ⑭実社会とからめる指導は生徒の関心を呼びやすく、数学が苦手な子の意欲を引き出す効果 ⑮新指導要領で教える内容が増え、教え込むのに手いっぱいで実生活とからめた授業をする余裕がないと感じる教員も多い ⑯事情は中学も同様で都内公立中学校の50代教諭は「教科書には日常生活とからめた問題が多くない」と指摘 ⑰「例えば米国の教科書には関数の学習でハンバーガーのカロリーと脂肪分の関係を考察するものもあり、互いに考えを出し合い探究する学びや実社会の問題を扱う学びを採り入れていかないと数学嫌いはなくならない」 としている。
 日常生活とからめた数のセンスは幼稚園以前から形づくられ、小学校で確立し、中学・高校ではより一般化・抽象化した数学の概念を学ぶのだと、私は思う。例えば、保育園・幼稚園・家庭で、食事の前に「餃子が○個あるけど、みんなが同じ数だけ食べるには、1人何個食べればいい?」「ぶどうは、1人何個食べれば、同じ数だけ食べられる?」など、具体的に数えたり触ったりしながら食べ物を前にして教えれば、幼い子でも数や割り算が頭に入る。小学校では、もう少し学問的に身長・体重・成績などの中央値・平均値・分散・標準偏差等から統計学の基礎を教えられるため、⑨⑩⑪⑭は教え方次第である。そのため、⑮⑯⑰については、指導要領の中に実生活とからめたわかりやすい事例を盛り込んでおけば、先生も生徒も理解し易いだろう。⑫の大学入試の段階は、既に高校で学んだ一般化・抽象化された数学の概念が身についているか否かをチェックするもので、数学と実生活のかかわりは、⑧のように、15歳くらいまでに勉強しておくものだ。なお、⑬の「数学は好きか否か」は、「数学のセンスがなければ論理的・合理的にものを考えることができず、論理的・合理的にものを考えられなければ正しい結論は出せない」と教えておけば、殆どの子どもは数学が好きになろうとするだろう。

*9-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S15811208.html (朝日新聞 2023年12月7日) 多子世帯、大学無償化へ 25年度から、所得制限なし 政府方針
 「異次元の少子化対策」をめぐり、政府は3人以上の子どもがいる多子世帯について、2025年度から子どもの大学授業料などを無償化する方針を固めた。所得制限は設けない。教育費の負担軽減で、子どもをもうけやすくする。「こども未来戦略」に盛り込み、月内に閣議決定する。対象は子どもが3人以上の世帯。大学生のほか、短期大学や高等専門学校などの学生も含める方針。入学金なども含む方向で調整している。子どもとしての数え方も今後詰める。年収380万円未満の世帯では現在、授業料を減免したり、給付型奨学金を出す支援制度がある。政府は今春、少子化対策として、24年度から、年収600万円までの中間層の多子世帯などに対象を広げ、授業料を減免すると発表した。今回は多子世帯は原則、所得制限なく無償化すると踏み込んだ。政府は6月に、児童手当の拡充などを盛り込んだ少子化対策の「戦略方針」を決定。当初は事業規模を約3兆円で検討していたが、戦略方針の素案公表の直前の5月31日、5千億円ほどが上乗せされた。この際、岸田文雄首相は「高等教育の支援拡充」などを「私の指示で実施することにした」と表明。これまでその内容は明らかになっていなかった。政府は近く3・5兆円規模の財源確保策も示す方針だが、社会保障の歳出削減なども必要になる。

*9-2:https://digital.asahi.com/articles/ASRD54V05RCXUTIL02D.html?iref=comtop_7_04 (朝日新聞 2023年12月5日) 日本の15歳、数学的リテラシーに課題 教諭ら「授業する余裕ない」
 各国の15歳(日本では高1)を対象とする2022年の学習到達度調査「PISA〈ピザ〉」の結果を経済協力開発機構(OECD)が発表した。調査の一環で実施された生徒へのアンケートでは、日本の数学の授業で「日常生活とからめた指導を受けている」と答えた割合が低いとの結果が出た。背景に何があるのか。今月4日、東京都練馬区の都立大泉桜高校の2年生を対象にした「数学Ⅰ・A演習」の選択授業で、新型コロナのPCR検査を題材にした授業が行われた。生徒たちはこれまでの授業で、全員検査の場合と感染疑いのある人にのみ検査した場合のそれぞれの陽性者数などを試算。4日の授業ではこうしたデータを元に、政策としてどちらが妥当かといった点を議論した。検査対象を絞る政策について、生徒からは「無駄な病床を使わなくて済んだ」「感染を広げたのでは」と賛否両論が出た。熱心に議論していた男子生徒は授業後、「おもしろかった。数学は社会とは関係ないと思っていたけど、身近に感じた」。担当した上田凜太郎主任教諭は「データに基づいて判断する力が生徒たちの将来に生きる。価値観や前提によって結論が変わることに数学を通して気づけるのも大きな学び」と狙いを話す。PISAは、多くの国で義務教育修了段階にある15歳時点の学習到達度を測るため、OECDが00年から3年ごとに実施。コロナ禍による1年延期を経て行われた今回の22年調査では、OECD加盟37カ国を含む81カ国・地域が参加した。PISAは毎回、3分野のうち1分野を重点調査しており、今回は数学的リテラシーが対象となった。アンケートで「先生は私たちに日常生活の問題を数学でどう解決できるか考えるよう言った」かを尋ねたところ、「全てまたはほとんどの授業」「授業の半数以上」「授業の半数程度」で指導があったと答えた日本の生徒は計36・1%。OECD加盟国の平均51・9%を下回り、加盟37カ国中36位だった。「先生は日常生活で数学がどう役立つか示して見せた」は計28・0%で、37カ国で最低だった。
●なぜ教育現場で浸透しない? 「大学入試と関係」の声も
 22年度から順次実施されている高校数学の学習指導要領では、日常生活や社会の事象を数理的に捉えて問題を解決する力を養うことが重視されている。ただ、教育現場では浸透しきっていないのが実情だ。都立西高校の森本貴彦教諭は「各大学の個別入試との関係が大きい」。21年に大学入試センター試験に代わって始まった大学入学共通テストの数Ⅰ・Aではキャンプ場から山頂を見上げる際の角度を考える問題や、短距離走での歩数と1歩で進む距離の関係について取り上げた問題などの出題がある。一方、特に各大学の個別入試は数式や図形のみを使った従来型の問題が多いといい、その対策を優先すると演習が増え、「社会事象とからめた問題に時間をかける余裕があまりない」という。数学的リテラシーの日本の結果をみると、成績を6段階に分けたときの上位2層が、前回と比べて統計的に有意に増えた一方、最下位層は11・5%から12・0%と横ばい。アンケートで数学が大好きな教科か尋ねると、そう思わない生徒の割合は6割でOECD平均より高かった。
●順位は上昇、学校への「所属感」向上 でも… 専門家が読むPISA
 実社会とからめる指導は生徒の関心を呼びやすく、数学が苦手な子の意欲を引き出す効果もあるとされる。関東地方の公立高校で数学を教える30代教諭も、各単元ごとに1度は日常の題材を採り入れている。ただ、通常の授業よりも準備などに時間がかかるため毎回扱うのは難しいという。周囲を見ても取り組みが進んでいないと感じる。「新指導要領で教える内容が増えた。教え込むのに手いっぱいで、実生活とからめた授業をする余裕がないと感じている教員も多いと思う」。事情は中学でも同様だ。都内の公立中学校の50代教諭は「教科書には、日常生活とからめた問題が多くはない」と指摘する。自身は独自に開発した教材などを使うが、「多忙で教材が作成できず、教科書に依拠して授業をする教員は多い。その結果、日常生活との関連が弱くなりがちだ」という。西村圭一・東京学芸大教授(数学教育)は「例えば米国の教科書には、関数の学習でハンバーガーのカロリーと脂肪分の関係を考察するものもある。互いに考えを出し合い探究する学びや、実社会の問題を扱う学びを採り入れていかないと、数学嫌いはなくならない」と話す。今回のアンケート結果などを分析した文部科学省の担当者は「残念だ」と受け止める。これまでも高校に入ると計算などの問題演習が増える傾向が指摘されてきたとし、「結果を受け止めて対応を検討したい」と話す。

| 男女平等::2019.3~ | 04:08 PM | comments (x) | trackback (x) |

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